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第542話 千の妖の黒き芒4



「何だ、源氏(げんじ)のせがれじゃねぇか。いくら知り合いでもガキに酒は売れねぇよ?」


 店の奥から出てきた白髪頭の初老の男性が出てくる。


「酒を買うのは妾じゃ。酒を売ろうてくれるな?」

「!?」


 少年の背後から現れた黒芒を見ると、酒場の店主が腰を抜かす。


「せ、千妖の黒芒っ……!?」

「ええい、そんなことはどうでもよい。酒を売るのか? 売らんのか? ハッキリせい!」


 苛立った黒芒の声に店主はビビりまくりながら慌てて酒を持ってくる。何てもんを連れてくるんだという目で少年を睨みながら。


「う、売ります! 売らせていただきます!」

「ならば、この酒樽を貰おう、あと木樽と盃もくれ」


 金を払い酒樽と木樽と盃を受け取ると満足そうに店を出る。


「いい酒が手に入った。感謝するぞ、小童」

「いえ、僕も嬉しいです!」


 黒芒の喜びが己の喜びかと言うように少年は笑う。


「何がそんなに嬉しいのじゃか? 可笑しな奴よの、酒が手に入ったのは妾じゃというのに。さて、妾はもう行くぞ? さらばじゃ、小童」

「あ、あの何処に行くんですか?」

「決まっておろう? 酒を飲むんじゃ。それに昼間の桜を見ながらの酒と言うのを味わってみたいしの」


 とてもじゃないが一人では飲みきれそうに無い大きな酒樽を持った黒芒が足を進める。

 その足を少年の声が止める。


「僕も行っていいですか! 勿論タダでとは言いません。この街の美味しい物を持っていきます!」


 ふむ、と悩む黒芒。普通ならば即「来なくてよい」と断っていた所だが、酒のつまみとして何か食糧を提供してくれるとあれば少々魅力的だ。


「ふむ、頼んでよいかの? 妾は肉が食べたい」


 小金貨を二枚少年に渡し黒芒は「昨日の木の下で待つ」と告げる。


「お金、僕が出しますのに」

「そなたとはそこまでしてもらう仲では無い」


 バッサリとそう言い残すと黒芒は今度こそ大きな酒樽を持ち、その場を去って行く。


「分かりました。お肉買って行きますね!」


 去る黒芒にブンブンと手を振る少年だが、黒芒は特に気にする素振りを見せず、振り向かずに歩みを進んでいった。


 *


 少年を待つ黒芒は待ち合わせの木の下に着くと、早速酒を飲んでいた。


「中の下、程度の酒じゃの。まあ朝から飲めるんじゃ、文句は言うまい。じゃが、もう少し冷えてるとよいかの」 


 すると黒芒は絶妙な氷魔法のコントロールで凍らないように酒を冷やす。


「♪」


 程よく冷えた酒を口に運んだ黒芒の機嫌はよくなる。飲み口が良く酒のピッチが速くなる黒芒だが、黒芒のその手を止める者も、注意を促す者もその場には誰もいなかった。



 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

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