第541話 千の妖の黒き芒3
「これはこれは〝千妖様〟こんな昼間にお珍しい」
「ふむ、誰じゃったかの? ここに来るのは初めてじゃった筈じゃが。まあよい、買い取りを頼むぞ」
出てきたギルドの男には目も暮れず黒芒は換金を要求する。
そして颯爽と現れたギルド職員によって査定が行われ金が支払われた。
金を受け取った黒芒がギルドを後にしようとすると不意にギルド職員から話し掛けられる。
「黒芒様、宜しければこちらの依頼をお受け願えませんでしょうか?」
黒芒に渡されたのは近隣の魔獣の討伐依頼だ。
「興味無いの。妾は忙しい、さらばじゃ」
今度こそ黒芒はギルドを去る。黒芒がギルドを出る頃には噂の〝千妖〟を一目見ようと人だかりができていたのだが、黒芒がそれに気にした様子は無い。
*
酒を買おうと朝からやっている街の酒場を探しに向かう道中、昨日見た顔と遭遇した。
「黒芒さん!」
「昨日の小童か、朝から元気よのう?」
「どこか行くんですか? あ、怪我少しよくなってますね」
黒芒に会えて嬉しいらしくブンブンと手を振って近づいて来た。もしもこの少年に尻尾があったならばそれはもうバシバシと喜び振り回していただろう。
「ちょいと酒を買いにの。そうじゃ小童、この時間でも酒を売ってる店を知らんかの?」
「お酒ですか? 怪我に障りますよ」
「心配は無用じゃ、それに妾は酒なんぞに蝕まれはせん。酒の売ってる店は知らぬのか?」
「知ってますよ。案内します。飲みすぎないでくださいね」
少年は優しく微笑んだ。
街を案内され少年に付いていく黒芒はため息を漏らした。
理由は簡単、少年があちらこちら寄り道をするからだ「あの店のパンは絶品ですよ」「花が綺麗ですね」「あ、イチゴですよ!」「僕大好きなんです!」などと一向に酒を売る店に行こうとしないのだ。
しびれを切らした黒芒は低く口を開く。
「酒の案内をしないのなら、妾は行くぞ? 自分で探す」
「あああ、待ってください。直ぐそこですから! 直ぐ着きますから!」
「ふん、早くせい。自由な小童じゃ」
柔らかな風が吹いた。そういえば山には桜が咲いていた。そんな季節かと、一体何回目の春だろうと、そう言えば昼にこんな満開の桜を見たのは初めてだと黒芒は思う。
そして桜を見ながら酒を飲むのも面白そうだと更に黒芒は酒が欲しくなる。
「この店ですよ。お父さんの友達のお店なんです」
着いたのは酒場、昼も営業してる様子だが、昼にはまだ遠い今は準備中とある。
父親の知り合いと言うこともあり「おじさーん!」と少年は準備中の店の中に入っていくのだった。
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!




