第540話 千の妖の黒き芒2
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「ふむ、影には入れぬか〝天聖〟の〝スキル封じ〟は強力よのう? 解術には数ヶ月かかるかの……」
影に潜れない、その間は必然的に昼間は寝てられないことになる。さっきは〝天聖〟との戦いの疲れもあり太陽の昇る木の下にて睡眠を試みたが、やはり大嫌いな日光の中でまともに睡眠など取れやしない。
暗い部屋に閉じ籠る手もあるが、長年、本当に長年、影の中で睡眠を取って来た黒芒は、影の外ではあまり……というか、殆ど寝られなかった。ならば嫌いな昼を起きて過ごし、貴重な夜に睡眠を取る方がまだマシだと黒芒は考えた。意外と神経質なのである。
お節介な小童のお陰で腹は膨れた。
だからと言うワケでは無いが少々眠いと黒芒は睡魔を感じる。
〝天聖〟との戦いで魔力も莫大に消費した。
命を賭けた決闘を挑んだワケでは無いが、それでもそれなりの勝負をした。結果は黒芒の敗北。
幾千の時を生き、力を積み重ねてきた〝幻霊種〟の黒芒ですら思った。奴は規格外の強さだと。同時に心も踊った。これほどの強者が存在することに。
これで〝天聖〟が異性であったとすれば恋にでも落ちていたかもしれぬと、また黒芒は笑った。
少年が置いていった〝回復薬〟を徐に口に運ぶと、美味くも不味くもない、その液体を一気に飲み干す。
「なるほど。これは良いのう」
月の輝く夜の下、黒芒は適当な太めの木の枝に飛び乗り睡眠を取る。日光の下よりは快適に寝れそうだと黒芒はゆっくりと目を閉じ夢の中へと入って行った。
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日が昇ると黒芒は不機嫌そうに目を覚ます。
「影に潜れないというのは難儀じゃの。まさか太陽と共に目覚める事になるとは、生きてる間には色々あるの」
吸血鬼以上に日を嫌う黒芒は忌々し気に天を仰ぐ。
「酒でも飲むかの。いや、先ずは金か……」
思い腰を上げ、黒芒は森に入る。
黒芒の目的は狩りだ。黒芒とて金は必要だ。冒険者登録こそしてはいないが、似たようなことをやっていたりする。
「さて、魔物を狩るか、動物を狩るか? ん?」
現れたのは豚だ。翼のついた豚。
「空豚か、丁度良い。今日の狩りはコイツじゃ」
ヒュッ──と、空豚を仕留めると、そのまま街のギルドへと持っていく。
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──〝ラスナ王国〟ギルド
「これを買い取って貰えるかの?」
ギルドに空豚を持ち込んだ黒芒は空豚の買い取りをギルドに依頼する。
1000年前のギルドは今ほどチェックは厳しくない。冒険者登録をしてなくともドロップアイテムや空豚等の動物の肉、果物等も買い取ってくれるし、ぶっちゃけギルドに貼られている冒険者への依頼書を誰が受けても構わなかったりする。
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