第537話 遅めの夕食2
──各々、食事を頼み、お冷やを飲みながら一息着くと、周りがやたら騒がしい。
宴会でもやってんのか? 肩を組み、酒を持ち、料理を口に運び、飲めや食えや歌えやの大騒ぎ。
あー、重税の王族がしょっぴかれて、全うな〝聖教会〟が政治をやるんで暮らしが楽になったと浮かれてるワケか。そりゃ飲んで騒ぎたくもなるか。
「街の皆さん嬉しそうですね」
桜が儚げに言った。
「あの日、人攫いが来なければ、お爺ちゃんとお婆ちゃんと一緒に私も今頃浮かれ騒いでいたかもしれませんね」
桜は泣くわけでも笑うわけでもなく、ただ思ったことを口にしたみたいだった。
「でもそうなると皆さんには会えなかったんですよね……そう考えると寂しいですね……出会いって不思議です」
「俺は、嫌だったらごめんな。桜に会えて嬉しかったよ」
その言葉に桜は優しく微笑んでくれた。
丁度、そのタイミングで料理が来た。
いただきますを言い、食事を取る。
出てきた料理は異世界で食べた料理の中でトップ3に入る美味さだった。つーか、美味ぇ!
クレハも黒芒も、そして桜も自然と笑みが溢れた。
俺は桜が笑ってくれたのが凄く嬉しかった。桜にはこれから楽しいこと嬉しいことをたくさん見つけてほしいな。そんな事を考えながら俺は何の肉か分からないやたら美味い肉を口に運ぶのだった。
*
どれもこれも美味かったので各自に頼んだものを少しずつ皆でシェアしながら食べ、満足の食事を終えた。クレハが頼んでた、虹牛のビーフシチュー。一口貰ったがこれが俺の胃袋に刺さりに刺さり、こっそりともう一皿追加注文し平らげる。
こっそりと注文したが、勿論バレバレでクレハと桜に「普通に追加で頼めばいいのに」と、クスクスと笑われた。ちなみに黒芒はそんなやり取りの間に俺の虹牛のビーフシチューの三分の一を平らげやがった。普通に追加で頼めばいいのに。
会計を済ませ店を出ると月が少し雲に隠れていた。
「のう、主様、今日も酒に付き合ってくれぬか?」
「ん? 別に構わんが、お前酒好きだよな」
酒飲みの黒芒だが、黒芒は酒に呑まれバカな騒ぎを起こしたりは全くしない。逆に気品すら感じさせる上品な酒のお手本のような飲み方だ。酒の量は多めだが。
「うむ、酒は妾の数少ない娯楽じゃからの。それに今日は──」
「ん? それに今日は?」
「いや、何でもない。酒が入って気が向いたら話す」
そういうと、黒芒は空を眺め「月だけはいつの時代も変わらんのう」と、少し風流な事を呟くのだった。
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