第535話 遺骨の行方
テーブルに着くと、うつむき骨壺を抱いた桜が泣きながら口を開いた。
「私……お爺ちゃんとお婆ちゃんの骨……埋めたくないです……」
「離れたくないってことか?」
「……はい……ダ……メ……ですか?」
桜は懇願する。
別に俺の許可は必要ないんだがな。
「気持ちは分からんでもないが勧めはしないな」
「……埋めたらもう本当に会えなくなっちゃいます」
桜に取っては埋葬が本当の最後の最後の別れなんだ。辛いよな。寂しいよな。悲しいよな。骨だけになっても離れたくないよな──
特にいきなり訪れた死と言うのは受け入れがたいものだ。殺されたんなら尚更だろう。
「──メモリアルリング」
「メモリアルリング……って、何ですか?」
唐突な俺の言葉に桜は頭に〝?〟を浮かべる。
クレハと黒芒も同様に俺に視線が集まる。
「遺骨から作る指輪のことだ。簡単に言うと遺骨がダイヤモンドになる。それを指輪にするんだ。桜の受け取り方次第だが、これならいつも一緒にと言えるんじゃないか? 遺骨のまま持ち歩くよりは現実的な意見の筈だ。この世界にメモリアルリングって物が無いなら俺が作る。だが、その場合、今ある遺骨の半分以上を使うことになるが……桜、どうだろうか?」
「遺骨が指輪にダイヤモンドになるんですか!?」
「もっと具体的に言うと確か骨から炭素を抽出して、更に不純物を取り除き黒鉛化させる。そして高温高圧の環境下でダイヤモンドを製作する。後は研磨してカットを施す。まあ、科学の分野かな?」
「ダイヤモンドってあのダイヤモンドですよね? 遺骨が本当にダイヤモンドになるんですか……?」
「この世界のダイヤモンドってのがどんなかは知らないが、多分あってる。硬くてキラキラした宝石だ。と言っても、人工ダイヤってことになるが」
「お願いします。指輪にできるならいつも一緒にいられます」
「決まりだ。だが、少し時間がかかるぞ?」
科学の出番だ! と、思ったが、これが何ヵ月単位で時間がかかるのだ。だが、この世界には魔法がある。魔法を上手く応用することができれば、もっと早く人工ダイヤが作れるんじゃないか?
神様ですら言っていた。科学にできて、魔法にできないものはまず無いと。
「大丈夫です! お願いします!」
「ん、引き受けた。遺骨、預かっていいか?」
迷わずに桜は「お願いします!」と、骨壺を渡してくる。信じてくれるのはありがたいが、ちょっと信用し過ぎじゃないか? まあ、悪い気はしないけど。そんなことを〝アイテムストレージ〟に遺骨を仕舞いながら考えるのだった。
〝アイテムストレージ〟に仕舞われ、俺の手元から消える遺骨に少し寂しそうな表情をする桜の顔がやけに印象に残った。
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