第533話 後の祭り
『レモンが戦ったってことは圧勝だったろう?』
『はい。人攫いの頭目も先輩様が片付けてくれていたので相手と言う相手ではありませんでした。これが伝えておきたかったお礼の内容でございます』
『実はな、今、黒芒が〝ヘッドドラゴン〟の残党を追おうとしていた所なんだ。そいつらにはウチの桜の家族を殺された。桜も拐われ売り飛ばされる寸前だった』
『そんなことが……黒芒様にお伝えください。後は我々にお任せくださいと。必ずそれ相応の報いを受けさせると。一人たりとも逃がしません。逮捕します』
『黒芒なら俺の横で聞いてるよ──だそうだ? 黒芒どうする』
『妾には人類が行う逮捕と言うのはよく分からん。妾はそやつらを殺す気でいた。そやつらは桜の大切を殺した。誰かを殺すと言うのはまた己が殺される覚悟のある者がすべき行いじゃ、見過ごしはせん』
これには耳がいたいね。俺も。どんな悪党であれ命は命だ。勿論、生きるべきじゃない奴もいるけど。
『〝聖教会〟では死すらも言わば〝あの世への逃げ〟と捉える記述があります。生かし、捕らえ、反省をさせるのが〝聖教会〟の習わしです。まあ例外もありますが……手に負えない物はあの世へ送り、地獄の〝閻魔羅様〟に裁きを委ねる〟という考えもあります。黒芒さん、この一件、私共に預けてはいただけませんか?』
『どうする黒芒? ジューリアは信頼にたる人物だ。それに〝聖教会〟には俺の友達のノアもいる』
『いいじゃろう。そなたらを信じよう──〝聖教会〟を信じるのはこれで二度目かのう』
『ありがとうございます。必ずや裁きを下すと主神に誓い約束を果たしましょう』
『あと5分遅かったら黒芒が痺れをきらして人攫い共を消しに向かってたところだ。タイミングよく、良すぎるぐらいだが、連絡してくれたことに礼を言う』
『いいえ、こちらこそ。では、先輩様と皆々様、ごきげんよう。失礼いたします』
『ああ、ノアに宜しくな』
そう言い通信を切った。黒芒は通信が終わると何も言わず、また俺の影の中に帰っていった。
「……桜の家に戻ろう。埋葬するなら、その場所がいい筈だ」
「桜ちゃん、行こう?」
両手に骨壺を抱える桜をクレハが優しく諭す。
クレハの言葉に小さく桜は頷き小さく足を踏み出す。
*
桜の家までは誰も何も言葉を交わさなかった。
時折立ち止まり溜まって流れた涙を拭う桜をクレハは心配そうに背中を擦っていた。
もし、あと数日、いや、ほんの1日だ。俺がこの街に来るのが早ければ、俺は桜の家族を救ってやることができたのだろうか?
そんな後の祭りな事を考えながら俺は歩く。日が暮れ、月が夜を照らす、だいぶ気温が下がってきた道を。
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