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第52話 天然娘



 *


 ノアが去った後、俺はフィップとアリスと共に、そこら辺の料理屋に入って、軽く食事を取る事にした。


 時刻は昼はとっくに過ぎて、夕方近く、おやつの時間といった感じだ。


 チラホラと人はいるが、微妙な時間なので店は特に混んでおらず、すぐ席に着けそうだ。


 店に入ると、此方を見もせず「いらっしゃい」と男性の店員に声をかけられたが、特に店員の案内も無いので、適当に空いてる席に座ろうとすると……


「姉ちゃん、こっち来てちょっと酌してくれよ?」

「おい、ズリいぞ! 俺とも仲良くしようぜぇ。それに、可愛い顔と中々良い身体してんじゃねぇか! なあ、ちょっと、色々と付き合ってくれよ?」


 酒を飲み、酔った様子のガラの悪そうな客に〝給仕服(ウェイトレス)〟姿の女性が絡まれている。


「や、やめてください。それに、今は私はプライベートなんで! いや、プライベートじゃ無くても、お断りですけど!」


 その〝給仕服(ウェイトレス)〟姿の女性は『プライベートなんで! いや、プライベートじゃ無くても、お断りですけど!』と〝給仕服(その姿)〟では、あまり聞かない、独特な断り方をしている。


(てか、この声と、この天然具合……どっかで……?)


「あ、お前、ふざけてんのか!」

「あんま舐めてると痛い目みるぞ!」


 チンピラ勢も、酔っている事もあり、中々にヒートアップして来て、今にも〝給仕服(ウェイトレス)〟姿の女性に掴みかかる寸前なので……


「おい、お前ら! プライベートでも、プライベートじゃなくても、嫌だってハッキリ言われてるだろうが! ──飲み過ぎだ! その辺にしておきな?」


 せっかくなので、俺はこの〝給仕服(ウェイトレス)〟の〝プライベート大作戦〟に乗っかりつつ、チンピラ勢を止めに入る。


 ……まあ、作戦なのかは知らないけどさ?


「あぁ!? 何だと、この糞ガキ! 殺すぞ?」


 今度は俺の方に絡んできてガンを飛ばしてくる。


(てか、酒臭え……)


「ほわぁ! ユキマサさん! ユキマサさんじゃないですか! 救世主です。救世主が現れましたよッ!」

 

 俺を見るなり、ぴょんぴょんと、飛び跳ねて喜びながら──脱兎の如く、俺の後ろに隠れる、この〝給仕服(ウェイトレス)〟姿の女は思ったとおり……


「アトラ……お前こんな所で何やってんだ?」


 ギルドの直ぐ近くにある、クレハ行きつけの料理屋〝ハラゴシラエ〟で働く〝給仕服(ウェイトレス)〟であり、その店の店主の姪でもある、金髪ショートの〝人間(ヒューマン)〟の少女──アトラだ。


「──おい、ユキマサ、何遊んでんだ? お嬢が、早くしろって怒ってるぞ? 早く来い!」


 すると、先程まであくびをしながら、この様子を退屈そうに見ていた、フィップが痺れを切らしてこちらに声をかける。


「おい、無視してんじゃねぇぞ!!」


 チンピラの男が殴りかかって来るが……


 俺は、ひょいっと、それを(かわ)しながら、チンピラ男を──ドンと後ろから軽く蹴り飛ばす。


「おい、こっちにやんな!」


 俺が蹴り飛ばした先にいたフィップが、キレ気味で更にその男を──ドンッと、まるでサッカーボールのように蹴り飛ばす。


 蹴り飛ばされたその男は、もう一人のチンピラ男を巻き込む形で店の奥へ、ドカドカドカン! と辺りのテーブルを巻き込み、破壊しながら吹っ飛んで行く。


「ほわぁ……」


 その様子をアトラは俺の後ろに隠れて見ている。


 すると、ガラガラガラ……と、壊れたテーブルの瓦礫の中から「ぐふッ……」と痛そうに、男達は立ち上がり


「……も、もう許さねぇぞ」


 と、片方は剣を抜き、もう一人の方は懐から銃を取り出した。


 相手は武器を構え、もう引き下がる様子も無いようなので、俺は瞬時に〝アイテムストレージ〟から〝魔力銃〟を手に取り出し──


 ──ヒュン、ドン、ドン!!


 最低限の動作で、チンピラ男達の()()に向けて〝魔力弾〟を撃ち──そして、撃ち終わると、また直ぐに〝アイテムストレージ〟に〝魔力銃〟を戻す。


 そして、男達の持っていた武器に〝魔力弾〟が当たると、剣はバキンッと折れ、銃はバンッと破裂する用に壊れる。


「な、なんだ!! お、俺の剣が!?」

「俺の銃もだ……!? な、な、何が起きた!?」


 武器を構えたら──剣は折れ、銃は破裂するという状況に(おちい)った男達は、あんぐりと口を開けて、その場で固まり、自身の壊れた武器を見つめていた。


「だ、だ、だ、誰だ、出てきやがれ!!」 


 次に二人は辺りを見回し叫び始める。


 どうやら、俺が()()()と言う事に、気づいてすらいないみたいだ。


 俺が〝アイテムストレージ〟から〝魔力銃〟を取り出し〝魔力弾〟を撃ち、そして再度〝アイテムストレージ〟に〝魔力銃〟を戻すまでの時間は──()()()()()()()()


 それこそコンマ1秒以下の刹那の瞬間──

 実際、今かかったのは約0.002秒程の時間だ。


 フィップが蹴り飛ばしたせいで、俺からチンピラ男達までは5mぐらいの距離もあり、俺もノーモーションで〝魔力銃〟を撃ったので、このチンピラ男達はここにいる誰かでは無く……


 どこか他の場所から狙って狙撃されたと、()()()して、慌てて辺りを見回してるみたいだ──。


(てか、狙撃されて、慌てて叫ぶ時間あるなら、とっとと逃げるか、隠れるかしたらどうなんだ……? もし本当に〝暗殺者(スナイパー)〟がいたら『殺してください』と言ってるようなものだぞ?)


 一通り辺りを見回し、他には誰もいない事に、やっと気づいたらしいチンピラ男達が、今度はこちらを見て目を、見開いて驚いている。


 ちなみに、その視線の先は俺ではなく……


 ──俺の斜め右の後方に立つフィップだ。


「……う、嘘だろ……桃色の髪に……背中に大鎌を背負った……きゅ、吸血鬼って事は……」


 今更ながら、改めてフィップを見たチンピラ男達の顔が、どんどん青ざめていく……


「えーー!! こ、こ、この人もしかして〝アーデルハイト王国〟の〝桃色の鬼(ロサラルフ)〟ですかあぁーーー!!」


 だが、驚きながら大声で叫んだのは、チンピラ男達ではなく……俺の後ろに隠れているアトラであった。

 

「いや、何でお前が一番驚いてんだよ?」

「それは驚きますよ! というか、ユキマサさん、何で、そんな超有名人と一緒にいるんですか!?」


 ぴしぴしとフィップに向け、指をさし、少し行儀は悪いが、悪意は全く無い、相変わらず天然のアトラ。


(そういや、フィップは超の付く有名人だったな?)


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ! 悪かった、お、俺達が悪かったから……ゆ、許してくれ……」

「ちょ、ちょっと飲みすぎちまったんだよ? もう、お前達に関わらないからよ……こ、この通りだ……」


 フィップの正体に気づき、さっきとは真逆の態度で、床に這いつくばり、震えながら謝っている。


「酒は理由にならないだろ?」


(バカか? こいつら?)


「どうすんだ? これはあたしの問題じゃねぇぞ? まあ、お嬢を待たせてるって事については、そろそろ我慢の限界だが?」


 と、結構、イラついてるようで、俺を不機嫌そうに睨み、フィップは『早くしろ?』と見てくる。


「──ひッ……!」


 ついでに目を向けられたアトラが、怯えながら更に俺の背中に隠れる。


「あ、おい、アトラ。別にお前は悪く無いだろ? それに、フィップもお前に怒ってる訳じゃ無いから、そんな怯えるなよ」

「ほ、本当ですか……そ、そうですよね……よかった。──あ、というか、ユキマサさんと一緒にいたって事は、もしかして私の味方って事じゃないですか!」


 〝あ、私気づいちゃいました!〟とばかりに、アトラは急にテンションをあげてくる。


(いや、間違っては無いが、頭の中でどんな連想ゲームしてんだ? この天然ウェイトレスは?)


「それに、私にはユキマサさんも付いてるんですからね! 何を隠そう。こないだのヒュドラの〝変異種(ヴァルタリス)〟を単独討伐をしたのは──今、まさに、私が後ろに隠れている、このユキマサさんなんですからね!!」


 ふふんッ! と俺の背中に隠れながら、

 何故かスゴく自慢気なアトラ。


「……ま、まじかよ……ヒュドラの〝変異種(ヴァルタリス)〟の討伐者って……ま、まさか……く、〝黒い変態〟か……!」


(──は……?)


「あ、あり得ねえ……で、でも──〝桃色の鬼(ロサラルフ)〟を相手にあの態度だぞ……? に、逃げるぞ、こんなの勝てるわけねぇ……」


「──おい、待てッ! それ誰に聞いた!」


「「ひっ! に、逃げろ!! こ、殺される!」」


 青ざめた顔で出口に向かい、一目散に逃げる二人だが……出口付近で店員に「おい、金払え! 壊したテーブル代もだ!」と言われ「退()け、金なら払うから! 頼む、退いてくれ!」と、懐から出した貨幣を、投げるように店員に渡し、必死に走り去っていく。


 てか、店員め──今まで、盛大に素知らぬフリをしてた癖に、金だけはしっかりと請求してやがって。




 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

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