第527話 焦る時間
*
「──悪いな、少し邪魔するぜ? この国の教会ってのはここであってるか?」
クレハと桜を連れ、この国では手配書が貼られてないという指名手配犯の俺は少し堂々と教会の扉を開ける。
「はい、何かご用ですか?」
現れたのは初老の修道士だ。
何となくだが頼りない……
ジューリア、レモンを見た後だと尚更だ。
「単刀直入に聞く、遺体を探している。この子の祖父母の遺体だ。ここ数日の話だ。心当りは無いか?」
「遺体ですか? ここには残念ですが今はございません。ですが、昨日までご高齢の遺族不明の遺体が保管されていました」
回りくどいな、要点を言ってくれよ。
と、思いながらマイペースに話す初老シスターに話を続ける。
「それだ。それは今何処にある? 教えて貰えるか?」
そう聞くと初老修道士はゆっくりと口を開いた。
*
修道士の話を聞き教会を後にした俺たちは火葬場へと向かっていた。
この国では殺人は日常茶飯事までとはいかないが、他国と比べると結構な頻度であることらしい。
遺体の回収はこの国にも役立たずながらいたらしい憲兵が行い。身元が分からない、遺族が不明な遺体は教会に運ばれ24時間で火葬場に問答無用で運ばれるという。まあ、指名手配犯だとか、損傷が酷いとかの例外で直接火葬場に運ばれるケースもあるらしいが。
火葬場に運ばれ火葬される。それはごく普通なことだ。だが、ここに一つ、異世界もとい、日本人的には普通ではない事があった。
身元、遺族不明の遺体は一週間分の者を纏めて焼いてしまうということだ。
これがどういうことかと言うと、もう焼いてしまえばどれが誰の骨かすら分からなくなるということだ。
その前に何としても回収するぞ!
時間が無い、急がなければ。運ばれたのは昨日とのことだが、昨日の時点で焼かれてればそこでアウトだ。桜の額にも嫌な汗が滲み出ている。
俺でもこれだけ焦ってるんだ。桜の心中は計り知れないだろう。なあ、神様、この悲劇の少女に最後ぐらい、家族の遺体と言う最後の持ち物を引き継ぎたいと言う願いぐらい叶えてやってくれよ。
「桜、ちょっと失礼するぞ?」
「あ、はい……!」
急ぐ為、足が速くは無い桜を俺がお姫様抱っこする。
「クレハ〝空間移動〟で付いてこれるな?」
「……うん。大丈夫」
「何で少し不機嫌なんだよ?」
「べ、別に不機嫌じゃ無いよ! そんな事より、急ご、桜ちゃんのお爺さんとお婆さんを見つけてあげなきゃ!」
「そうだな。急ごう」
そうして俺たちは火葬場へ急ぐ。
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