第524話 最後の持ち物
「ユキマサ君、今日はどうするの? 次の街を目指す? もうこの国に用は無いでしょ?」
「そうだな。でも、まだこの国には少し用がある」
ズズっと、ワカメの塩スープを飲みながら俺は優雅に……いや、ワカメスープじゃ優雅にモーニングとは格好は付かないか。
いや、美味いんだけどさ。ワカメスープ。
「用事って? 王族絡み?」
小さな声でクレハが問う。
「まあ、この話は後だ。朝食を取り終わってから話そう」
不思議そうにするクレハにそう告げ、俺は最後のおにぎりに手を伸ばす。
*
宿を出ると俺は今日行く場所を言おうとする……のだが……
「腹も膨れたし、太陽も昇った。妾はそろそろ寝るとしようかの」
と、今日の行動に早速欠員が出た。
てか、黒芒、今から寝るのか! そういや昼夜逆転してたな。朝起こして来たのも早起きじゃなくて寝てなかっただけか。
そう俺が考えてる間にも黒芒は俺の影の中へとスルリと消える。あー、もう、はい、おやすみ!
「行っちゃったね……」
「まあいい。夕方になれば出てくるだろ」
何かあれば呼ぶが、眠いんじゃ寝かせてやろう。
睡眠は大事だしな。それに眠れる時間があるってのは幸せなことだと思う。まあ、個人的な意見だがな。
「で、今日の予定だ。桜、お前の家に行くぞ──」
*
──桜の家、それはつい数日前までは普通の祖父祖母と孫が暮らす、平和な場所だった筈だ。
それが人攫いの手によって幸せな家庭は破壊された。祖父祖母は殺され、孫の桜は売り飛ばされる寸前までいった。
「桜、辛いことを思い出させるようで悪いが、今からお前の家に行く。殺されたお前の爺ちゃんと婆ちゃんの──遺体を探すぞ」
桜の目の前に立ち、真っ直ぐに俺は告げる。
「……お爺ちゃんとお婆ちゃんを……」
下を向きうつ向く桜はキュっと己の服の袖をつかむ。
「遺体ってのは人の──そいつの人生の最後の持ち物だ。それは桜、お前が引き取って弔ってやれ」
「お爺ちゃんとお婆ちゃんの最後の持ち物……」
そう俺の言葉に往復するように呟くと桜は少しだけ息を吸った。
「私、引き取りたいです。ちゃんと、しっかり。お爺ちゃんとお婆ちゃんの最後の持ち物を──!」
目は涙ぐんでいたが、力強いハッキリとした言葉だった。
「桜ちゃん……私も手伝うよ! 何でも言ってね」
「クレハお姉さん、ありがとうございます。ユキマサさんも本当に本当にありがとうございます……」
「礼には及ばん。それに泣くのはちゃんと見つかってからにしな。殺されてから日にちが経ってる。この国では殺された遺体が何処に運ばれるか知らないが急いだ方がいい」
そうして俺たちは急ぐ──桜の家へと。
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!




