第523話 宿屋の朝
──翌日。
〝ジークア王国〟宿屋
「主様よ、朝じゃぞ」
目を覚ますと、その声は一番端の俺のベッドの中、もっと正確に言えば、もぞもぞと布団に潜り、俺の身体の上からした。
「……んっ……黒芒か……早いな……もう起きてたのか?」
艶めかしい、漆黒の髪が俺の顔をくすぐる。
てか、本当に美人だよなコイツ。
後、色々と柔らかい、柔らかい、柔らかい。
「──黒芒さん! 朝から何やってるんですか! ず、ズルい!」
「……朝ですか……おはようございます……て、わわっ!?」
飛び起きるクレハと瞼を擦りながら目を覚ます桜。
「……おやすみ……」
黒芒の暴力的な迄の柔らかさを感じつつ、現実逃避……じゃなかった、甘美なる二度寝へと俺は旅立つ。
「ちょ、ユキマサ君、自由過ぎ! 何でここで二度寝の選択肢が出てくるの!? ──起 き て !」
「ふむ、ならば妾が口付けでもしてみようかの。太古の昔より異性を目覚めさせるのは異性の口付けと相場が決まっておると聞くからのう」
「絶対ダメです!!」
──ヒュン、パッ! と、クレハが自身のスキル〝空間移動〟でタイムラグ無しで移動し、パッ、パッと更に〝空間移動〟のスキルでベッドと黒芒を引き剥がす。生きてる者には直接触れてなければならない為、今、クレハは黒芒の手を握っている。
その握る手の握力が何となく強い気がするのは気のせいか? まあ、どうでもいいか。別に黒芒も嫌がってるワケでも痛がってるワケじゃないし。
ベッドを取り上げられては二度寝も何も無い……まあ、床に寝る手もあるっちゃあるけど。今は床に寝る気分でも、そこまで睡眠が足りないワケでもないので、俺はしぶしぶながら、起床を決意する。
朝は毎日やってくるが、相変わらず、また今日も朝が苦手な俺なのであった。
*
宿屋の朝食はパンとスープかと思ったら、おにぎりとワカメの塩スープだった。パンより米派の俺にとってはこれは嬉しい誤算だ。いただきます。もぐもぐ。
「美味しいです」
両手でおにぎりを持ち、上品に口に運ぶ桜は気を使ってなのか、それとも本音なのかは分からないが、そんな感想を呟く。
「そりゃよかった。残さず食べな」
と、言いつつ、俺もおにぎりを口に運ぶ。
「米は久しぶりに食べたが、この米は美味いのう」
こちらも上品におにぎりを食べる黒芒が少し感激したように呟く。
「そうか? この世界基準で考えても普通だと思うが、まあ、千年も経てば米の味も変わるだろう。炊き方は勿論、農業も日々進化を遂げてるだろうしな」
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