第518話 ジークア王国の宿屋
*
街の宿屋に入ると直ぐ様チェックインする。
うん、まあ、当たり前か。
「四人で1泊頼む、あ、桜は部屋分けるか?」
「あ、いえ、その……一緒がいいです……」
一人だと怖いのかな、人攫いにあったばかりだもんな。そりゃ怖いか。
「あの、四名様ですか? あとお一人は?」
「あー、なんつーか、影の中にいる。だから気にせず四人分の料金を取ってくれ、朝食も四人分頼む」
「か、影? 何かのスキル持ちの方でしょうか。分かりました。そのように手続きさせてもらいます」
この宿は夕食は別料金で一階が酒場のようになっており、朝食は無料で付くシステムらしい。
まあ、わざわざ外に出ずに食事ができるだけで十分にありがたいか。
ベッドは二つしかないので隣の部屋から移動してくれると言われたが、持ち込むのでいいと断った。宿の女将には〝?〟の顔をされたが『アイテムストレージだ』と答えると〝!?〟と驚いた顔をされた。
ちなみに普通に考えると部屋から部屋へのベッドの移動は重労働だと思われるが、魔力強化もレベルもあるこの世界は普通の人間が〝元いた世界〟よりも何倍も強い。平均以下な一般人が〝元いた世界〟だと軽くオリンピック選手になれるぐらいには元の力が違う。ベッドぐらいなら宿屋の女将でも片手でひょいだ。
丸テーブルに付き『おーい、飯だそ』と黒芒に呼び掛けると、スルリと影から黒芒が瞼を擦りながら出てくる。
「おはよう、夜だけど……で、何かあったか?」
「はて、何のことかの?」
「何か思う所があったんだろう? そう顔に書いてあるぜ?」
少しの沈黙。クレハと桜も黙って会話を聞いている。
「主様には隠し事はできぬようじゃのう」
少し遠い目をした黒芒は目を奪われるぐらい妖艶にそして儚げに微笑んだ。
「少し昔を思い出しておった。なぁに、もう全て終わっておる。気にしても意味はない、意味はないのじゃ。妾は随分長く眠っておったようじゃの」
「ノアの話から推測するに軽く1000年は封印されてたんじゃないのか? 過去に何か忘れ物でも?」
起きたら1000年という感覚はどう言う物なのだろうか、俺ならきっと頭がおかしくなってしまうような珍事だろう。
誰もいない、長い長い時間に自分だけ一人残されたまま置いていかれた。そんな感覚だろうか。
ずけずけと聞けないな。家族はいたのか? 友人は? 恋人は……いないようなことを言ってたか。
もう少し配慮してやるべきだったかな。黒芒にも。
「忘れ物、そうじゃな。そんな所じゃ」
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