第515話 何を願うか
「先輩様はこれからどうするおつもりで?」
「これからと言うとこれからの俺の行動、果ては行き先と言うことか? あっちこっちの街を見て回るつもりだが、俺の目的は今も変わらん。魔王討伐だ。魔王は俺が倒す。それが俺のあいつとの約束だ」
「そうですか、そうですね。私たちの信じた先輩様はそう言う方です。ノア先輩からも話は聞いてますよ」
「ノアから? さて、どんな話をされてることだか」
「異世界から我々を救いに来てくださったと聞いてます。我らが主神──女神アルテナ様に呼ばれて」
「俺さ、ニートやってたんだ」
「に、ニート? えーと、ニートとは? あ、勇者か何かの言い回しですか!」
ぶっ! 至って真面目なジューリアの返答に思わず俺は吹き出しそうになる。
「ハハハ、まさか。簡単に言うと学校に通ったり、仕事もしてない奴だ。そうなったのには明確な理由は無い、どうも俺はあの世界が苦手でな? まあ、素敵な物もあったが、同い年の奴等は青春真っ只中の時間に、俺は毎日惰眠を貪り、そして退屈していた」
牧野からの適当に割りの良い仕事をポツポツやってたり、孤児院の食事当番もやってたから完全ニートでは無かったかもが、まあほぼニートだろう。
すると今まで黙ってたレモンが口を開く。
「貴方は本当に女神アルテナ様に会ったのですか? 神様は本当に、本当にいらっしゃ──
そこでピトリと言葉が止められた。
「いえ、申し訳ありません。主神の存在を疑うなど信徒としてあるまじき発言でした。申し訳ありません」
ああ、皆、不安なんだな。
──神様の存在や死後の世界を人は一度は誰しもが考えたことがあるのではないだろうか?
〝神様に会ったことがある〟この言葉にどれ程の意味があるだろうか? 〝元いた世界〟なら〝中二病〟だとか〝嘘乙〟とか言われて吐き捨てられるのが殆どだろう。
だがこの異世界では少し違う。神様の存在がこの異世界では証明とまではいかないが、あの科学の世界よりはずっと信じられている。実際居たしな。
ノアの発言だけでは無く、嘘の分かる(濁す発言も分かるらしい)〝審判〟のスキルを持つフォルタニアからもお墨付きを貰っている俺に直接聞きたいのだろう『神は本当にいるのか?』と、神様が実在するとなれば、気持ちだけでも救われる人間は少なくないのでは無いだろうか?
レモンには何か神様に叶えて欲しい願い事でもあるのだろうか?
神様への願い事か──星に願うか、神に願うか。人類ってのはお願い事が好きだよな。俺も嫌いじゃない。
星に願うと言えば〝流れ星〟が定番だろう。そして行事なら〝七夕〟だ。時に〝七夕〟とも呼ぶ。
知ってのとおり〝七夕〟は神様によって離れ離れにされた織姫と彦星が1年に1日だけ会うことができると言う何ともロマンチックな日だ。
〝牛朗織女〟だったか──
元は中国発祥の物語の筈だ。
いつかの〝七夕祭りの日〟祭り大好きの親父が杯に入った酒を傾けながらこんな話をした──
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