第510話 処遇2
『そっか、忘れちゃったか。1000年前の記憶なんて覚えてる方が変か。あれ? でも、封印されてたってことは昨日のことのように覚えてるんじゃないかな? って、思うのは私だけってことにしておこうか♪』
『改めて聞くが、黒芒の件は俺に預からせてもらう形でいいんだな? ノア?』
『うん、それでいいよ♪ それに私は黒芒さんが封印されていたってことに少し引っ掛かる所があるんだよね。何故、討伐じゃなかったのか。ってね。まあ単純に強すぎて封印するしか方法が無かったって線もあるけど。何となくね、私のカンだけど』
『当代の〝大聖女〟は酔狂よのう。どんな顔をしているのか顔でも拝みたくなったぐらいじゃぞ』
『ふふ♪ うん、それはいいね。私もあの〝千妖伝説〟の主人公に会えるなら会ってみたいかな♪ 噂だと凄い美人さんだって聞いてるよ? ね、レモンちゃん♪』
『ふぇ!? な、何でここで私に話を振るんですか!? た、確かに凄い美人な方ですけど……』
不意に話を振られたレモンが戸惑いの色を見せる。
『ついでにレモンちゃんのこともユキマサ君に紹介しとこうかと思ってね♪ 〝天童〟レモン・リーリア。実力だけなら私とおじいちゃんに次いで〝聖教会〟のNo.3。戦闘能力としてならジュリちゃんをも凌ぐよ』
『だろうな。さっき俺も剣を止められたばかりだ』
『いいえ。あれは、全く本気の攻撃では無かった筈です。あなたにとっては風でも撫でるかのような、ただそれだけの攻撃だった。もし本気のあなたの攻撃なら私では受けきれなかった。この私の愛刀である──この〝菊花〟もきっと無事では済ま無かったでしょう』
『まだまだ修行かな? レモンちゃん♪』
『はい。私はまだまだ修行が足りません』
『そういや、話が変わるが、ノア、お前大丈夫なのか? 〝魔王戦争〟があったんだろ? 新聞で見た』
『あ、うん。その事で私もユキマサ君に謝らなきゃイケない事があったんだった……ごめんなさい。ユキマサ君、今回の戦争では君に借りができちゃった』
『ん? どういうことだ?』
『うー、それがね、実は私も口止めされてるから詳しくは言えないんだ。ごめんね。でも、これだけは伝えなくちゃイケない。この一件の請求先はユキマサ君、キミへのツケって形で、この戦争は終わりを向かえたんだ』
『悪い、さっぱり分からん。請求先? ツケ? 俺に? 誰が?』
『……魔王を撃退したのは私でもエルルカさんでも騎士隊長でも無い。魔王を撃退したその人は言ってた。今回の一件はユキマサ君にツケて置くと。そしていつかに約束した、けったいな異世界の話を期待しているってね──』
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