第509話 処遇
『──ユキマサ君? わお、ビックリかな♪ さて、どうして、ジュリちゃんとレモンちゃんと一緒に?』
『〝ジークア王国〟で奴隷解放と王族と奴隷商人を潰そうとしてたらな、王宮でジューリアとレモンに会った。二人の目的は勿論知っているだろう?』
ジューリアとレモン級の奴らが動いたとなれば上司に当たるノアが知らない筈もない。
『うん、ジュリちゃんとレモンちゃんに〝ジークア王国〟に向かうように仕向けたのは私だからね。それにしても奴隷解放に動いてくれてたんだね、やっぱりユキマサ君はユキマサ君だね♪ 私、嬉しいな♪』
『別に腹が立ったから動いただけだ。そもそも俺は奴隷は嫌いなんだ──っと、本題に入らなきゃな。──〝千妖〟という二つ名人物の事は知ってるな?』
少しだけ空気が変わる。
『〝千妖〟か〝千妖伝説〟の。確か本名は黒芒さんだっけ? うん、知ってるよ。さて、その封印を解いたのはユキマサ君だね? 〝通信石〟で話しただけだけど、あんな焦ったおじいちゃん久しぶりに見たよ』
『ああ、よく分かったな。で、レモンたちは黒芒の処遇を決めかねてるらしい。簡単に言えば捕まえるか否かだ』
『なるほど、なるほど。ぶっちゃけると何で黒芒さんがフォールトューナ家に封印されてたのか、今じゃ記述も昔の戦争で焼けちゃって残ってないんだよね。だからもし何らかの罪で封印されてたとしても正直な所、罪名も分からないの』
『封印されてたって事はそれなりの理由があるんだろうが、俺はここに誓おう。これから先、黒芒のすることなすこと全て俺が責任を取る。だから今は見逃しちゃくれねぇか? 悪いが、頼む』
『それでいいよ♪ 千年も昔の話だ。時効何て言葉もあるぐらいだしね。うん、おじいちゃんには私の方から伝えておくよ。あ、でも一応、本人に尋ねてみようかな、ねぇ、黒芒さん、貴方は何で封印なんてされたの?』
〝通信石〟越しにノアが黒芒に問う。
サラッと尋ねるとは流石ノアだな。
『妾に直接問うか? ほほ、面白いのう、当代の〝大聖女〟は、ムカついたからゴミと一緒に国を2つほど潰したら、怒られてしもうてのう。あの時代の〝大聖女〟はシアと言ったか、奴にはしてやられたのう』
『シア・フォールトューナ──確か何十代か前の〝大聖女〟の名前だね。今から約1000年前の〝天聖時代〟の人物の筈だ。あはは、私のお婆ちゃんって呼び方の前に曾がいくつ付くかな? それで、国を2つも滅ぼす程にムカついた理由は聞いてもいいのかな?』
『……もう昔のことじゃ。忘れた……そうか、あの小童も、もうこの世には居ないのじゃろうな……』
黒芒が初めて少し沈黙した。まだ短い付き合いだが、コイツの一瞬でも沈黙はとても珍しいことなのだと何となくだが、俺はそう思った。
何処か寂しそうな悲しそうな黒芒の綺麗な横顔を俺は見ていた。
そして俺は聞いた。蚊の鳴くかのような小さな声で「幸ある生であったならばよいが」と、それはそれは小さく呟いたのを──
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