第505話 昔、昔の、伝説の
「──長い黒髪と黒眼、それに対をなす白い肌に、金と黒の二本の扇……これじゃあまるであの伝説の」
十字架を容易く防がれたバイザーがそんなことを呟いている。
『あの、こんな時に何なんですけど……黒芒さんて、あの本物の黒芒さんですか……?』
震えるような桜の〝精神疎通〟が聞こえてくる。
『どの黒芒さんだよ?』
『はて、妾の偽物がおるのかの?』
『……じゃあ本当に〝千妖伝説〟の!?』
驚く桜の声が頭に響く。
『おいクレハどういうことだ?』
『え、え、私!? えと〝千妖伝説〟って、あ! だから黒芒さん封印されてたの!?』
バシィィ! と、黒芒の扇がバイザーの十字架を弾く。弾かれた巨大な十字架はミシミシとヒビが入りやがては割れて壊れた。
「なっ……」
「退屈じゃのう、暇潰しにもなりはせん」
ビシッと、黒芒がバイザーの首に扇を当てる。
「主様から殺すなとの命令じゃ、感謝することじゃの」
ドバァン! と、バイザーを身体を軽くヤード単位で吹き飛ばすほどの峰打ちを持って、バイザーと黒芒の戦いは黒芒の圧勝に終わった。
*
「く、黒芒だと!? バカな……〝千妖伝説〟と言えば〝天聖時代〟の更にまた昔の古の大戦を生き抜いた、伝説の〝幻霊種〟の昔話──なぜ、今なのだ! なぜ、今こんな場所にそんな化物がいる!?」
王族が怒鳴る。やべー、俺のせいだ。
俺が封印解いたから居るんですよ。
つーか、フォールトューナ家が封印してたって事は本当に解いちゃいけない奴だったんじゃないか?
いやでも、いい奴だぞ、黒芒、俺は好きだ。
「〝天聖〟懐かしい名前が出たの。今はどうなっておるのかや、妾は思いの外、長く封じられてたようじゃのう」
そんな話に耳を傾けていると音も無く毒針が俺に迫る。ひょいひょいと避けると、背後から人の気配がする。
心臓を一突き。いい狙いだ。
「アロ・ドットだな。止めときな。お前じゃ俺には勝てやしない」
「そういうワケにもいかない。お前は俺が殺す」
静かな声だ。普段から気配を消して生きてるんだろうな〝暗殺者〟も大変だな。
次にアロは短剣を取り出してくる。
短剣を最小限の動きで斬りつけて来るアロは、やはりプロだな〝二つ名持ち〟なだけはある。
〝暗殺者〟とは傍迷惑なプロだけど。
『主様よ、妾がやってしまおうか?』
『いいよ、俺がやる。それより王族と奴隷商人を逃がすなよ』
『承った』
それなりの業物であろう短剣を振るって来るアロは至って真剣だ。こういう実力を見極めて、それでも尚、死ぬ気で来る奴は正直、やりにくい。
俺も〝アイテムストレージ〟から〝短剣〟を取り出しアロに向かう。
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!




