第499話 奴隷オークション12
全員を見送った後〝アイテムストレージ〟から取り出した〝短剣〟に魔力を強く纏い、ヒュッと俺は飛ぶ斬撃を奴隷商のサーカステントに繰り出す。
店が残ってちゃ、直ぐにまた奴隷オークションを再開される可能性もある。その気になればあいつらは奴隷もまたそう時間を掛けずに掻き集められるだろう。
真っ二つに斬れた大きなサーカステントは音を立て崩れていく。
「で、お前らはこれからどうすんだ?」
一緒に元奴隷たちを見送った、トランプ、スリア、桜に俺は問いかける。
「私も身を隠したい所です。スリアさんと一緒に何処か遠くへ──……遠くへ逃げて、質素でも、笑われてもいい、二人でひっそりと暮らすのです」
スリアの手を取るトランプ。
「後はそうですね。小遣い稼ぎで始めたピエロの芸でも、もう少し極めてみようと思います」
「ピエロ? 今朝街の通りに居た、あのピエロはお前か?」
「あはは、お恥ずかしい。この街でそんな奇怪なことをしてるのは私ぐらいです。この街で見たピエロならば、それは私で間違いないと思いますよ」
「そうか、俺は楽しかったぜ。奴隷商の犬よりもよっぽど性にあってると思う」
黒芒はつまらなそうにしてたが、俺は世辞抜きでピエロ芸は面白いと思った。
「……ユキマサさん……いいんですか……? 私を殺さなくて、命令とは言え、私は貴方を殺そうとしたんですよ?」
「ハハッ、うん、そうだな。今なら一言『殺そうとしてごめんなさい』と謝れば特別に許してやる」
「そんなんでいいんですか? 言われずとも心から謝るつもりでした。殺そうとして本当に申し訳ありませんでした」
ガバッとシルクハットを地面に落ちるのも気にもせず、地面を頭に付けながら謝ってきた。
「ん、許した。こっちも殴って悪かったな」
「そんな滅相もありません」
これでトランプとは和解でいいだろう。
「奴隷商が戻ってくる前にさっさと行っちまいな」
「それは貴方もです。早く逃げてください! 私は貴方に死んでほしくない。分かってるんですか? この街の奴隷商には王族が、国が関わっているんですよ」
「心配には及ばん。それに国ならついこないだも多分ここよりも有名で大きな国を一つ敵に回したばかりだ。今さら、もう一つぐらい増えてもそう変わらん」
え? お前、反省してないだろって?
してる、してる。猛省だよ。後悔はしてないけど。
「「「……!?」」」
三者ドン引きの様子だ。
……どうなら、国を敵に回すってのは、俺が考えている以上にバカげたことらしい。
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