第492話 奴隷オークション5
「──さて、答えろよ? お前らの奴隷全員解放して今までの行いを詫びるってなら、一度だけ、一度だけだ。殺さないチャンスをやる。奴隷商、お前もだ」
〝魔力銃〟を王族の頭に向け、ドスを利かせた声で俺は良い放つ。
歯軋りをし忌々し気に俺を睨む王族たちと奴隷商。
どうやら、降伏の意思は無いようだ。
「あと10秒以内に返事を寄越せ。俺は気が短いぞ」
「ふざけるな! わしを誰だと思っている!」
「え? ゴミの形をしたゴミ」
あー、うん。それってただのゴミだった。
「──ッ!?」
「お逃げください!」
俺に攻撃を仕掛けてきたのはトランプだ。
魔力を纏い振るうステッキの威力は強い。
「私はここから逃げられないのです。生きるも死ぬもきっとこの奴隷商と一緒、それしか道は無いのです」
そっと、悲しげにトランプは俺だけに聞こえる声でそう言った。
「トランプ! 奴を早く殺せぇ!」
「ハッ、直ぐに!」
すみません。と、そうトランプの顔が告げていた。
……ああ、コイツも言ってしまえば奴隷だ。自由には程遠い、人質という足枷の付いた飼い主の言うことを聞くしか無い、一人の奴隷なんだ……
「そっか、それがお前の答えだってんなら何も文句は言わねぇさ。でも俺は止まらねぇぜ、トランプ──」
トランプの全身全霊の全力の攻撃魔法が来る。
このサーカステントぐらいなら普通なら軽く吹き飛ばせる威力だ。それを器用に威力を圧縮し、人一人分ぐらいの黒い円弾となって俺に迫る。
「終わりです。黒い来客者さん、ご退場を──」
黒い円弾を放つトランプの表情は最後まで優しかった。
〝アイテムストレージ〟から〝月夜〟を取り出し〝魔力銃〟と〝短剣〟を仕舞う。
月夜を構えた俺は、トランプの黒い円弾をそっと斬り飛ばす。
こんなあっさりと斬られると思ってなかったのか、トランプの焦った表情が面白いぐらいよく分かった。
「退場はお前だ、トランプ。つーか、こんな場所からはさっさと退場した方が身のためだ」
ドガン。と、俺の拳がトランプの顔面を殴り飛ばす。
そのまま客席を破壊し吹き飛ぶトランプは気を失った。
……筈だった
「おいおい、まだ立てんのかよ?」
意識は飛んでる。
なのに何故、コイツは立ち上がるのか?
ああ、今なら分かる。死んでも守りたいもの。そんな素敵なものがコイツにはあるんだ。
正直、羨ましいかな。
俺には多分まだ知らない感情だ……
勿論、トランプが守りたいものってのは奴隷商のことじゃない。奴隷商に人質に取られている、大切な人のことだ。
「終わりだ、トランプ。次に目を覚ました時には多分全部終わってる。でも、きっとそれはそんな悪い終わりじゃない筈だ──」
と、言いながら俺はトランプの腹に掌底を食らわせると、今度こそトランプはその場に倒れ伏した。
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