第487話 スイセンの少女
「頭ぁ!」
「嘘だろ……頭はレベル82だぞ」
「勝負にすらなってねぇ……」
人攫いたちが一人、また一人と逃げていく。
必要悪に乗っ取って、皆殺しにするつもりだったんだがな。
まあ、頭を失えば組織も散り散りになるだろう。
追うのも迷ったが、こっちも限界みたいだしな。
顔は全員覚えた。次に会った時は迷わず殺す。
限界と言うのは勿論、俺のことではない、逃げてきた、この少女だ。戦いの最中にビックリしたのか気を失って倒れた。
今は俺の腕にお姫様抱っこで抱えられている。
(さて、どうすっかなぁ……)
ほっとくワケにいかないし。取り敢えず、ボワァっと、俺は回復魔法を使い、少女を起こす。
「……ん……ここは……どこ……」
「目覚めたか、人攫いならもうここには居ないぞ」
ひっ! と、俺を見ると、一瞬だけビクリとし、その後、何故かホッと息を吐いた。
俺が言うのも難だけど、俺、一応指名手配犯だからな? ホッとするのはどうかと思うぞ?
「俺はユキマサ、お前の名前は?」
「わ、私は時伽桜と言います」
「時伽桜? 珍しい名前だな」
ていうか、日本人みたいな顔つきに名前も日本語みたいな羅列だな。
時伽何て珍しい苗字は聞いたこと無いけど。
「私は〝スイセンの国〟の生まれです。その髪と目の色はユキマサさんも〝スイセンの国〟の生まれではありませんか?」
「よく間違われるが、俺は違う。俺の故郷はきっともっと聞いたこと無い場所だ」
俺の遠回しの言いに桜はキョトンとした顔をした。
「速くこんな場所から去りな。二度と捕まるなよ。と、言いたい所だが、お前、行くアテはあるのか?」
「ありません……」
ふるふると桜は首を横に振った。
「私は〝7年前の魔王戦争〟で〝スイセンの国〟が滅びた後、この街に逃げ延び祖父母と暮らしていました。それが昨日、祖父母は殺され、私は拐われました」
ツー。っと、桜は静かに涙を流す。
「ユキマサさん、あなたはこの場所にどんなご用ですか? 私は人を見る目だけは自信があります。ここはあなたの来る場所でもない、何か理由が?」
「俺は情報収集だ。この場所次第で俺はこの国での出方を決めるつもりだ」
まあ、もう半分は答えは出てるんだがな。
「取り敢えず、俺と来るか? 身の安全ぐらいは保証してやる」
「い、いいんですか……?」
「ああ、だが悪いが、奴隷商にも付き合って貰うぞ?」
「構いません。ユキマサさんと一緒ならば」
「決まりだ。桜、取り敢えず、お前はこれ被っとけ」
俺は被っていたフード付きマントを桜に被せる。
これで俺は顔出し指名手配犯だが、まあいい。
それにこの場所なら顔出しでも大丈夫だろう。
そう考えながら俺と桜は奴隷オークションへと向かう──。
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