第480話 戦果
「終わったの……?」
ぐしゃぐしゃに壊れた壁と街を見ながらエルルカが呟く。
「みたいだね。大損害だ──〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟も壊されちゃったし」
「〝魔術柱〟は残り2本、あと二つ落とされたら人類は終わりね」
「こっちの戦果と言えば〝屍〟シリュウ・ブラックの捕縛とゴライアスの〝最悪種〟の討伐、割りに合わないな……身内が亡くなると戦果なんてどうでもよくなるんだね」
「身内?」
エルルカの問いに〝アイテムストレージ〟から取り出した壺を眺めノアは言った。
「この中にある心臓の一つが私の付き人、ヴィクトリアさん──ヴィクトリア・フィーの物だよ。流石に心臓の再生は私には無理かな」
ノアは知っている。
どんな魔法でも死人は生き返らない。
魔法でも出来ないことがある。はて? それは矛盾していないか? と、ノアは思う。
出来ないことを出来るようになるのが魔法なのじゃないかと。何のための魔法なんだと。
「……シリュウ・ブラックを連行しようか」
「そうね。それと大聖女……」
「何かな? エルルカさん。あなたも傷が深い」
「ごめんなさい。と、それだけ言わせて」
「謝られる理由が私には分からないかな。そうだな、なら私も逆に言うね。駆け付けてくれてありがとう。もう〝王国魔導士団〟でも無いのに、カッコよかったよ、頼もしかったよ、ありがとうエルルカさん──」
*
──〝大都市エルクステン〟
大聖堂跡地──
最早、見事な迄に粉々に破壊された大聖堂とその余波で壊れた半径500m程の周囲をノアは見渡す。
大聖堂の入口付近には領主であるガーロックと部下の憲兵たちが倒れていた。ガーロックの左胸部には穴が開いており、心臓がない。
「氷?」
倒れたガーロックはカチカチに凍っていた。
「──!!」
大聖堂を吹き飛ばす勢いでノアは瓦礫を蹴る。
そこにいたのは──
「ミリアちゃん!?」
ミリアだ。その傍らにはガーロックと同じくカチコチに凍ったヴィクトリアがいる。
「の、ノアさん!? こ、これはですね。凍らして仮死状態にして死を回避しようとして……ユキマサさんなら、ユキマサさんなら、もしかしたら脳死じゃなければ心臓も治せるんじゃないかって」
生きてるとまでは言えないが、まだ死んでない。
それだけでノアは希望が見えた気がした。
気づくとノアはミリアに抱きついていた。
「の、ノアさん。ごめんなさい。私の力じゃ時間が足りなくて、この二人しか凍らせませんでした。他の憲兵さんはもう凍らしてもダメだと思います……」
ショボンとミリア。
「ミリアちゃん、ありがとう──」
間に合わなかった憲兵たちには悪いが、ノアは心からヴィクトリアの回復が見込めることに歓喜した。
そして世間からは大聖女と呼ばれようとも、喜怒哀楽もあり、自身も、一人の人間なのだと、今、改めて気づかされるのだった。それがまた何処か心地よいと感じるノアは優しく空を見上げた。
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