第478話 授業料
「「──ッ!?」」
音もなく割って入ってきた男性に愧火の攻撃は防がれた。守られたノアと防がれた愧火が驚く。
190以上はある長身に黒髪、全身が鍛え練り上げられている見た目は20半ば~後半の物憂げな男性だ。
「本当は僕が手を出すのはルール違反なんやけどな」
男は空を見上げる。
「これは予定に無い魔王の誕生の様子見とユキマサ君への餞別や。ユキマサ君には何やら異世界のけったいな話を聞かせてくれる約束やからなぁ。これは酒の肴の前払いやで、まあ、姉さんに怒られてまうから、半ば無理矢理に理由をつけてるだけなんやけどな」
「あなた、ユキマサ君のお友達なのかな?」
ユキマサの名前が出たことで、ノアの警戒心がどっと下がるが、まだ油断はできない。
「まあ、そんな所や。なにせ1000年振りに腹から笑えそうな話をしてくれるらしいからな。こう見えて僕、笑いには餓えてるんや。で、君が当代の大聖女か?」
「うん、そうだよ。私はノア・フォールトューナ。ノアでいいよ。それで貴方も名乗ってくれるのかな?」
「ハハハ、これは失礼。名乗るのは自分からと相場が決まってるもんなぁ。僕は斑と言うもんや──」
そう名乗った瞬間、愧火が斑に飛びかかる。
相変わらず怪しげな表情だが、刀に魔力を強く乗せ斬りつける、一振りで山河を砕き、街が割れる──
「あのな、君。格上相手にそれは下策やろ?」
そんな威力の筈だった攻撃は、虫でも潰すかのように容易く、斑によって防がれた。
「これは授業料や、悪く思わんといてな」
──ド──バン──ッ!!
斑の掌底が愧火の腹を撃ち抜いた。
「ゴフッ──……」
致命傷──ではない。致命傷では無いのだが。
今の愧火は頭と心臓を同時に潰されなければ死なない。死なないのだが、数秒、意識を狩られた。
それが何を意味するのか、どれほど珍しいことなのか、意味を理解し横から見ていたノアは息を呑んだ。
「本当に誰なのかな? 私も知らないよ。貴方の存在──この強さ、尋常じゃないね」
「そんな風に誉められたのも何時振りやろうなぁ。僕は観測者、見張り役やからな。人前で拳を振るうのも何年振りか……」
「誰だ、テメぇ。今の俺がこんな易々と……」
「昔顔ぐらいは会わせたかもなぁ。でも、まあ魔族程度の顔は僕もよく覚えてないんや。ああ、今は元魔族やったか」
「ふざけるなぁぁァァ!!」
冷静さを欠いた愧火が斑に迫る。
「なんや、学ばんのか?」
大気が大きく大きく揺れる程の掌底が愧火の腹を貫いた。結果を見ればノア以上の威力だ。それを受けた愧火は今度こそ数秒では無く、意識が途切れた。
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