第476話 赤い空
「ゴライアスの奴は少し気に入ってたんだがなぁ」
愧火は一瞬、エルルカを睨み付ける。
すると愧火に助けられたシリュウが頭を垂れ、丁寧に口を開いた。上司へと言うよりは崇拝者の心構えで言葉を紡ぐ。
「愧火様、大変申し訳ありません。私の力が至らないばかりにお手を煩わせてしまい──」
「かてぇことはいい。厄介な結界の柱を壊したのはよくやった。あれは忌まわしき天聖の産物だからな」
ニヤリと怪しく愧火は笑う。
「まだ意識あったんだ、流石に〝限界超越者〟か」
少し遅れて戻ってきたノアが冷たい視線で言う。
無理もない、物心ついた頃からお付人として世話も焼いてくれたヴィクトリアの心臓を取られたのだ。
今さら取り返しても普通に考えてもう遅いだろう。
ノアは怒っていた。今まで生きてきた中でこれほどの怒りを覚えたことは無い。
身近な人、大切な人を殺されて平然としてるほどノアも薄情な人間ではない。
「空の赤色の弾、随分と大きくなったね。まあ、私が目を放してる間に落とされなかっただけマシかな」
「お陰さまで、たっぷりと魔力を込められたぜ」
ノアが右手を付きだす。
魔法陣が展開されレーザーのような熱線が放たれる。真っ直ぐに、真っ直ぐに愧火に向かっていく。
愧火はそれを斬った。
「終わりか?」
「全然」
パン、とノアが胸の前で手を合わせるように手を叩くと、100.200.500と魔法陣が愧火を囲う。
一瞬だけ、愧火の動きが止まる。そんな間にもノアの魔法陣からは熱線が容赦なく愧火を襲う。
ザン、ザン、ザン! と、愧火が熱線を斬り飛ばしていくが、光速の熱線が同時に500方向から来るとなると流石の愧火も捌ききれなかった。
8つの熱線が愧火を襲った。
魔力を纏い、攻撃を受け止めるが、ノアの魔法は愧火の想像の上をいった。
「チッ……」
グフっと血を吐く愧火。
だが、闘志は死んでない。怪しげな笑みを浮かべた愧火は楽しげにこう告げた。
「終わりだ、大聖女。俺の勝ちだ」
黒雲からマグマのように真っ赤な弾、ミニ太陽のような物が〝大都市エルクステン〟向け、落ちてくる。大きさは街の約10分の1程度、ただの爆弾と考えても街一つなら、優に消し飛ばせる威力だ。
無論、これも爆弾なんて優しい威力じゃない。
赤い空が落ちてくる。
そう、ノアとエルルカ、そして〝魔力枯渇〟で倒れるリーゼスと、同じく〝魔力枯渇〟を起こしてるが、何とか気力を保ち、リーゼスに肩を貸し支えるティクタスは思った。
「私では対応できないわ、大聖女、何か策はあるの」
「私は盾、任せて、エルルカさん。この街にあんな物を落とさせたりしないよ」
ノアは両手を広げる。
「《我らに幸あれ》──〝聖域〟」
街を飲み込むほどの大結界が愧火の魔法を覆った。
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!




