第471話 三人の状況
「〝王国魔導士団〟を抜けたのは、つい先日のこと。そんなあなたが一体なぜここに!?」
〝旧六魔導士〟のエルルカ・アーレヤストの登場に少なくない驚きを表すティクタス。
「この都市に居たのは本当偶然よ。弟子の顔を見に来てたの、そしたら〝魔王戦争〟? 笑えないわね……」
エルルカはひょいっと軽やかにリーゼスの後ろ襟を掴みあげ、ゴライアスから距離を取る。
「た、助かったわい……」
「礼には及ばないわ、リーゼス・ロック騎士隊長」
本当に窮地を救われたリーゼスは深く息を吐く。
「それに愧火が魔王になった? 最初に聞いた時は耳を疑ったわ。以前のガリアペストの〝魔王戦争〟の時にみすみす愧火を逃した私の責任になるのかしら?」
「それを言うなれば私もです。あの日、愧火とゴライアスを取り逃がしたのは、私も同じです」
自虐的なエルルカにティクタスが真剣な眼差しで言う。対するエルルカはそれでも納得はいかない様子で呟いた。
「そう、そう言ってくれると助かるわ。愧火は大聖女様が相手をしてくれてるのなら私の出る幕では無さそうね。因縁が無いと言えば嘘になるし、正直悔しいけど、あの二人の戦いは頭一つ抜けてるわ。確実に互角かそれ以上にあの二人を相手にできるとしたら、私の知る限りユキマサと〝限界超越者〟それに〝王国魔導士団〟ぐらいかしら。あら、意外といるわね……」
エルルカが不意に空を見上げる。その視線の先には積乱雲のような大きな黒雲と雷雲の空が〝大都市エルクステン〟に近づいて来る。
「──グギャアアアアアアアアア!!」
ゴライアスが吠えると大気が揺れた、反射的に耳を覆いたくなるような、腹の底から響く嫌な声だ。
そしてゴライアスの魔力が黒い衝撃波となりエルルカに迫る。
「本当に不粋ね。今は雲一つ無い快晴を見たい気分なのに。最悪の天気、嫌になるわ」
刀に魔力を込め、衝撃波を一蹴するエルルカ。
「私も手加減できる相手では無いみたいね」
二本のドスが深紅の焔に包まれる。
「〝緋刀〟」
次の瞬間、エルルカが消えた。
そう、ティクタスとリーゼスは錯覚した。
エルルカは〝空間移動〟は使えない。だが、それに匹敵する程の超高速移動が可能である。
紅く燃える炎刀がゴライアスの首を捉える。
しかし──
(──固いッ!?)
首を斬り飛ばすつもりで放ったエルルカの斬撃が数cmの斬り込みを与え止まる。
エルルカのせいではない、ゴライアスの反応速度が異常だったのだ。首を中心に強い魔力を纏った。それがエルルカの刃の大半を防いだのだ。知性はないが野生の感が鋭い。厄介な相手だとエルルカは思う。
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