第464話 陽動
──〝大都市エルクステン〟
vs愧火戦
ティクタスの重力系の魔法でクレーターを作りながら地面に沈んでいく愧火をティクタスは警戒した様子で眺めていた。
このまま押し潰してしまおう。
そうティクタスが考えた矢先だ。
ドン!!
魔法が弾かれる。
「くッ!?」
「あーあ、あーあ、つまらねぇ、つまらねぇ! もっと骨のある攻撃はねぇのかよォ!」
次の瞬間、無数の花が愧火を覆った。
「ん、皆、伏せて」
ヒュ──ドゴッ──ン!!
辺りを包む小さくない爆発。ビュンと刀が小さく振るわれた。その余波で爆発は書き消される。
「……つまんねぇなァ……」
「舐めんな! 新人魔王!」
シュッ、シュと、無駄の無い動きだった。
ラジは大剣を振りかざすが、愧火の刀が最小限の動作で受け止める。
次に剣を鞘に戻し愧火の真ん前に出たラジは──
「陽動はこんなもんか?」
愧火の背後に声をかける。
愧火は動けなかった。己の前で剣を鞘に戻すというラジの奇行に目を奪われていたからだ。
「ご苦労様〝覇空海・翼裂刃〟!」
愧火の背後を取ったヴィエラが背後から愧火の首をクロスするように合わせ、魔法を発動させる。
亜音速の魔法による斬撃、ヴィエラの高等魔法だ。
石だろうが、鉄だろうが、ダイヤモンドすらも斬るヴィエラの魔法を愧火はまともに食らった。
「ダメ、防がれてる。惜しかった」
ボタンが言う。
少しだけ首は斬れてるが、半分もいっていない。
魔力を纏って防いだのだ。
「いいぜ、そういう新しい攻撃は楽しめるからなァ」
ドン!!
愧火の頭部にライフル弾が命中した。
エミルだ──エミルの遠距離射撃だ。
血飛沫が上がる。ラジ、ヴィエラ、ボタンは、その行く末を、じっくりと見ている。
やったか! などと死亡フラグを建てるような騎士隊長は今、この場にはいない。
「だめだ、一旦距離を取れ!」
ラジが叫ぶ。
愧火が刀を横に振るう。それによりできた飛ぶ斬撃がヴィエラ、ラジ、ボタンを襲った。
威力は強い、致命傷まではいかないが、三人共、今日二度目の深傷を負った。
「こんなものか、お前らは騎士隊長だったか? もっと上を、王国魔導士を呼んでこいよォ──」
「──絶剣・極刃!」
「ッ!?」
ティクタスが愧火の心臓部に目掛け刃を振るった。こればかりは愧火は真剣に防御した。
「ひひひ……お前は悪くないな」
「悪くない? 私たちでは不満と? 舐められたものですね。いえ、またまだ修行不足なのは認めますが」
愧火とティクタスが刃を交える。この場で愧火に対抗できる可能性があるとすればティクタスだけだ。
「大丈夫、分かってます。ここは私にお任せください。ヴィエラさん達も向こうのゴライアスを」
「り、了解。貴方も重々気を付けるのよ」
「ん、私じゃ足を引っ張る、本当にごめん。任せた」
「直ぐ片付けて直ぐ戻る。死ぬなよ、ティクタス」
ヴィエラ、ボタン、ラジはそう言い残し、ゴライアスの元へ向かった。
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