第462話 回復
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回復補佐にはボタンが向かっていた。
ヴィエラ、ラジ、エミルは、それぞれ〝上回復薬〟を口に運ぶ。
「皆、急いで。愧火が来る。あれはティクタスでも一人じゃ倒せそうにない、私たちが力を合わせなきゃ」
淡々と無表情で喋るボタン。この中では一番の年下だが、敬語は使わない。でも、彼女の淡々とした喋りは聞いていて不思議と何処かしっくり来て心地よく、タメ口でも誰も気を悪くする者はいない。むしろ、敬語で喋られた方が不自然なまでであった。
決して浅くはない傷を負っていた三人だが、ボタンの声で急いで回復を試みる。
その間、愧火やゴライアスと戦う、ティクタスやリーゼスの戦いの余波で流れてくる当たれば普通に怪我では済まない噴石などはボタンが魔法で防いでいる。
「〝上回復薬〟で直ぐ治る傷で済んでいてよかったわ。致命傷は飲んでも絶対安静だもの」
「絶対安静程度ならば我々は戦わなければならない。騎士隊長としての自覚を忘れるな、ヴィエラ」
「あら、忘れたことなんて無いわよ。ラジ、私たちは腐っても騎士、人々の為に、国の為に、そして私の大切な妹や弟の為に、この命を賭けて戦うつもりよ」
「そうか、それならいい。余計なことを言ったな」
そんな二人の会話を遮るようにボタンが口を開いた。
「私はもう行く。あとエミル、貴方はもっと離れた所からの方が力を発揮できる。だから離れていて」
「ええ、了解です。そうさせてもらいましょう。私の射撃は遠距離でこそ最大の力を発揮する。カッコつけて出てきたものの、やはり接近戦は苦手だ」
長いライフルを担ぎ上げ、エミルは一人、その場を後にする。本人も言っていたが、離脱ではない。自分のポジションに合った場所に移動するだけだ。
ヴィエラ、ラジもボタンの後ろで立ち上がり〝魔力回復薬〟をクピクピと飲む。
「全回復、全力で行くわよ。刺し違えてでも愧火を撃ち取る。骨は拾ってもらえるかしら?」
「自分で拾え。俺は自己犠牲が大嫌いだ。億に1回ぐらいは、百歩譲って仕方がない時もあるかもしれんが、最後の最後の最後まで、そんな手段には出るな。お前の家族──兄弟たちを泣かせるなよ」
「ええ、そうね。それと貴方って意外と優しいのね」
ふふっと、ヴィエラは軽く笑う。
対するラジは兜で顔を覆っているのでその表情は分からない。意外と照れて顔を赤くしてるのかと思うとヴィエラは、今度は少し吹き出しそうになるのを空気を読み、寸での所で堪える。
そして隊長達の回復も終わり、改めて各自持ち場に付き戦いの第2ラウンドが今始まる。
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