第455話 敵襲
ゴロゴロゴロ、ドッカ──ンッ──!!
大きな落雷が落ちた。
「て、敵襲ッ──!!」
落ちた雷の中から現れた、その先頭に立つは、全身を包帯ぐるぐる巻き着流しに鋭い赤い目の魔族──
「あれは、魔族──愧火!?」
腰を抜かした兵士が愧火を指を差し震え上がる。
ダメだ。
あれは今の私たちが相手にできる存在じゃない。
愧火を見たミリアの判断は迅速だった。
「み、皆さん、逃げてください!」
ミリアが叫ぶ。
「ミリアちゃん先輩!」
「ギルドマスターに連絡を! ギルド騎士隊長に援軍を要請してください! 魔族には私たちじゃ手も足も出ません! 皆さん全力で逃げてください!」
うわぁぁ!! と、悲鳴が上がり、蜘蛛の子を散らすようにその場に居た人々が逃げ回る。
そんな中、一人だけ、一歩前に出る少女がいた。
「ミリアちゃん先輩! 先輩も早く逃げて!」
「ダメ、私は逃げられない。誰かが時間を稼がないとイケないから。私にできるか分からないけど、私がやらなきゃイケないんです」
力強い、有無を言わせない言葉だった。
怖い、本当は逃げ出したい。
でも、今、戦わなければ、クレハと、エメレアと、システィアお姉ちゃんと、お婆ちゃんとの──楽しいあの日には二度と戻れない。そんな気がした。
「なんだ? このチビはお前だけか?」
先頭に立つは魔族──愧火。背後には異様な強さと気配と色のゴライアス。
そして百鬼夜行を彷彿させる魔物や魔獣たち。
「ここは貴方が来ていい場所じゃない。直ぐに引き返してください。お願いします──」
淡々とした低い声だ。普段のミリアからは想像できない大人びた声でもあった。
もう誰か大切な人が死ぬのは嫌だ。
何も出来ず逃げ出すのも嫌だ。
弱い自分が嫌だ。
「興醒めだ。お前じゃない、もっと強い奴を呼びな。殺しがいのあるやつをよ」
「……んで……」
「あ?」
「……何で、貴方たちは私たちから、大切を──温かいを──未来を奪うの! もうやめてよ!!」
「……」
愧火の返事は無い。
質問の意味が分かってない様子の反応だ。
ミリアは杖を構える。そして有りッ丈の魔力を杖に付いてる〝聖海の青玉〟に込める。
「私はクレハの帰ってくる場所を、エメレアの目を覚ます場所を、システィアお姉ちゃんとマリアお婆ちゃんと私の今ある場所を守る!!」
お願い、お父さんお母さん、今だけ力を貸して──
槍投げのようにミリアが杖を愧火に目掛けて投てきする。
そしてミリアは人生最大の攻撃魔法を放つ──
「──〝永久氷爆〟!!」
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