第453話 ミリアちゃん先輩
3日程、時を遡る。
──〝大都市エルクステン〟
数日前、エメレアの意識が無くなった。
死んでいるのではない、まるで魂が抜けたかのようにある日、倒れ、今はずっとベッドで寝ている。
病院にも行った、診断は〝精神性魔力障害〟との事だ。精神的に追い詰められ、身体の中で魔力が上手く作られないと言う珍しい病気だ。
残ってる魔力が無くなればエメレアは死ぬと言われた。寝てて起きないのは自己生存本能の一種らしい。
簡単な話、魔力がまた作られるようになれば良し。
魔力が底を尽けば終わりと言うことだ。
一難去ってまた一難。
ミリアは目の前が真っ暗になった。
その日からミリアはエメレアの世話をしている。定期的に水を飲ませ、身体を拭く。昔、何度もやったことだ。それが奇しくも今生きた。
お婆ちゃんやシスティアお姉ちゃんに伝えた所、手の空いた夜になるが、毎日様子を見に来てくれるらしい。
少しだけホッとしたミリアはゴシゴシと溢れてくる涙を拭いた。
──その日の午後。
「では、ミリア、頼んだぞ!」
「はい、システィア隊長任せてください」
任務なので普段とは違う呼び方で話すミリア。その後ろからは5人の女性の第8騎士隊の騎士がいる。その全員がミリアより年上だ。
「ミリアちゃん先輩、頑張りましょう!」
だが、ミリアの方が立場は先輩である。ミリアは呼び捨てタメ口でいい、寧ろ自分がさん付け敬語で話すと言ったが、話し合いの結果『ミリアちゃん先輩』という呼び方ができた。
今日の仕事は大砦の門の修復作業の護衛。
ガリアペストとの魔王戦争以来、大砦の門はぐしゃぐしゃに壊れてしまっている。
修復のその間も魔物は侵入を待ってはくれない。故に護衛が必要なのだ。ミリアはこの第8隊臨時護衛班のリーダーだ。慣れない役職に自然と手に力がこもる。
ギルドを出ると──
「──み、皆さん。まだ時間があるので、先に、お、お昼を食べます!」
緊張したミリアが発した言葉に一同は、
「「「「「了解しました」」」」」
元気よく返事をする。
向かった先は〝料理屋ハラゴシラエ〟だ。騎士や冒険者はギルド内の食堂か〝ハラゴシラエ〟で食事を取るのが一般的だ。
ちなみに味は〝ハラゴシラエ〟コスパはギルド食堂と言われている。
「あ、ミリアさんですー! いらっしゃいませ!」
お店に入るとアトラさんが出迎えてくれた。あたふたしながらもミリアは食事に来た事を告げ大テーブルに皆で座る。
「──いらっしゃいませ。ご注文お決まりになりましたらお呼びください。こちらお冷やになります」
(あれ? 見たこと無い人だ。薄オレンジの髪の可愛らしい人だ。年は私より3.4つ上ぐらいかな?)
そんな視線に気づいたアトラさんが──
「あ、あの子はしなのんです。ついこないだ入ったばかりなんですよ。可愛いですよねー。あ、常連のミリアさんの2kg注文も教えとかなきゃですね。今の私はしなのんの良き教育係先輩なのでしっかりお店の事をレクチャーしなきゃいけないんです! 頑張ります!」
楽しそうに話しだした。
楽しい話を聞くと私も楽しくなる。
エメレアが目を覚ましたら、ここにこよう。前回は奢って貰ったから、今回は私の奢りでこようね。
だから、エメレア、早く目を覚まして。目を覚ませば、きっと楽しいことが待ってるから。寝てるなんて勿体ないよ。だから、お願い、目を覚まして。
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