第445話 黒霊山7
アヌビス──胴体が人で、犬のような顔、正確にはドーベルマンのような顔をした奴だ。
つーか、エジプトの神じゃなかったかコイツ?
身長は10mはある。そんな奴が自身の身長よりも長い槍を振りかざしてきたら、普通なら結構なホラーである。
ハハハ、だが、悲しいかな、ここ最近の俺は神様と言い、魔王と言い、ツチノコと言い、イカソムリエと言い、非日常的な物には耐性が付いてきていてな。
ついさっきも首が爆発するデュラハンとも戦ったばかりだ。ちょっとやそっとの事じゃ驚かないぞ!
迫る槍を俺は人差し指と中指の間で止める。
そのままグイッと腕を捻り槍ごとアヌビスをもう一体のアヌビスの方へ投げる。
ドカドカドカーン!! と、音を立ててアヌビスたちが吹き飛んでいく。
にしても、これが神様? アルテナには感じた圧倒的な存在感も何も感じられないぞ?
「ユキマサ君、見た目はアヌビスだけど、あれはアヌビスじゃないよ。恐らくメタモルゴーレムだと思う」
「変身ってワケか? 納得いったぜ」
とどのつまり、こいつはエジプトの神何かではなく、パチモン。ゴーレムが化けていただけである。
だが、何かを守っているのは違いないみたいだ。
パチモンゴッドの後方、そこには厳重な結界がある。結界のサイズは大玉転がしの大玉ぐらいの大きさの円だ。何を守ってる? ──いや、封印か?
起き上がってきたパチモンアヌビスが魔法を使う。身体が光だす。恐らくバフみたいなものだろう。
──が、そんな強化タイムを待ってやるほど、俺は優しくはない。
パチモンアヌビスに俺は奇襲をかける!
魔法陣を足場に跳躍し、二体の真上にでる。
そのまま俺は──
「──吹っ飛べ、コラァ!!」
魔力を纏った拳で殴り付けた。
頭からそれを食らったパチモンアヌビスの1体は粉々に割れて、最後はお馴染みのラグが走り消えた。
そうしてもう1体はと言うと、冷静なのか俺から距離を取り、後方の結界を守るような位置に立ち、立ち膝で槍を構えた。
「──鬼王斬〟!」
スパッ!
そんな効果音が聞こえた気がした。
飛ぶ斬撃がパチモンアヌビスを真っ二つに斬り、パチモンアヌビスはラグが走り消えていく。
(──と、マズったな。威力が強すぎた)
パチモンアヌビスを斬った所まではいいのだが、威力が強すぎて後方の結界まで斬撃が届いた。
ドガガガ、ガッシャーン!!
結界を割り、結界の中の木製の柱、を巻き込んで吹き飛ばしていく。
──ヒュウ──ゥゥン……!!
花火のような光が上がる。
ドン!!
眩しいな。ン? 人──?
「──ようやく忌々しい封印から出れたの。さて妾は何年眠ってたかのう?」
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