第406話 チャッチャラー・グットクール
「あ、ユキマサ君、おかえり」
「チャッチャラー君も一緒ですか? おかえりなさい」
目が見えない分、耳が良いらしいアリシアは足音でチャッチャラーの存在を発見する。
「ただいま、クレハ、随分と仲良くなったな?」
「チーッス! 貴女のチャッチャラー・グットクールただいま帰りましたッス! アリシアさん!」
俺はクレハにオレンジジュースを渡すと、隣にいたアリシアに「他意はない、少しだけ失礼する」と言い、アリシアの額に手を置く。
「ちょ、ユキマっさん、どうしたんスか!」
慌ててチャッチャラーが俺を止めようとするが、クレハが話って入り「少し待ってください!」と、チャッチャラーを制止する。
「さっきは話を聞いてやれなくて悪かったな。俺でよければ話聞くよ──ただし、暗い過去の話じゃなく、折角の祭りなんだ。明るい未来の話で頼むぜ!」
ボワァァ! と、回復魔法を使う。
──回復魔法を使うこと30秒。治療は終わった。
「おっと、まだ目を空けるなよ? 久しぶりに目に映る人間が見ず知らずの俺じゃ役者不足だからな。おい、チャッチャラー、お前の顔を見せてやれよ」
「ちょ、どう言うことスか? 話についてけないんスけど」
「目が見えるようになってる筈だ。嘘だと思うなら自分で確かめな」
ゆっくり、ゆっくりと、アリシアが目を開く。
「……チャッチャラー君……?」
「アリシアさん、俺が見えるんスか?」
「ええ、見えるわ。ハアトに似て優しい顔──」
──
────
『アリシアさん好きです。俺と付き合ってください』
〝7年前の魔王戦争〟から数年後、チャッチャラーはアリシアに思いを告げた。
思えば出会いは自身の姉の友達。
一目惚れだった。人とはこんなにも一瞬で恋に落ちるものかとチャッチャラーは心の底から思った。
『ありがとう。チャッチャラー君、でも目の見えない私何かじゃダメだよ。他に素敵な人を探しなさい』
一瞬だけ驚いた様子を見せ、直ぐに冷静にでも嬉しそうに、だけど寂しそうにアリシアは返事を返した。
数日後にチャッチャラーは再度思いを告げた。
『俺、本気なんス。俺と付き合ってください!』
『ありがとう。でも私も本気。私何かじゃダメだよ。チャッチャラー君には他にきっと素敵な人がいる』
数日後。
『アリシアさん、好きです。付き合ってください』
また数日後。
『俺、目が見えないとか関係ないスから。お願いします。付き合ってください! 幸せにしますから!』
またまた数日後。
『好きです。好きなんです。付き合ってください』
数日後。
数日後。数日後。
数日後。数日後。数日後。
数日後。数日後。数日後。数日後。
『アリシアさん……俺があの時、助けられてれば、目が見えなくなる事なんてなかった! 俺のせいッス、俺がダメでバカだから、アリシアさんが、アリシアさんの目がッ! サーセン、すいません、ごめんなさい』
ある日、1度だけチャッチャラーは涙を流した。
両腕でゴシゴシと涙を何度も何度も拭く。
チャッチャラーはこの日、ある事を誓った。
──『私何かじゃダメだよ』そんな言葉では無く、ちゃんとフラれるまでは思いを告げ続けようと。
その日は年に数回ある大雪の日だった。
それから約5年に渡りチャッチャラーは3日に1回というペースでアリシアに思いを告げ続けた。
アリシアからの返事は5年の間ずっと変わらず『ありがとう』と『私何かじゃダメだよ』の2つだった──
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