第399話 ある辺境にて
──魔王領・とある魔法で隠された大きな屋敷
「エルフの国〝シルフディート〟の〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟を破壊して参りました──大導師様」
長髪の黒髪にバンダナ、褐色肌の赤い鋭い目の男が膝を尽き頭を垂れ、数日前の出来事を報告する。
男はかなりのダメージを受けており、未だに傷の後が全身に残っている。何より男の左腕が肩から先が無いことが痛々しさを倍増させている。
「それはご苦労だったね。シリュウ──その件に関しては私は概ね満足だよ。でも、その怪我は何だい? まさか負けて逃げ帰って来たわけでもあるまいね?」
禍々しい屋敷の広い一室、大導師は落ち着いた口調だが、その言葉は嫌に重い。一言一言が重く呪詛のように伸し掛かって来るようだ。
ピリつく空気の中、シリュウは言葉を返す。
「面目次第もございません。ですが、次こそは必ず6人いる〝王国魔導士団〟を葬り去って見せます」
大導師が手を数センチだけ左から右に動かした。
たったそれだけで──魔王信仰・No.2の実力を持つシリュウは遥か後方へと爆音と共に吹き飛ばされた。
「グフッ……」
分厚い壁を三枚ほど貫いた所で漸くシリュウの身体は止まる。口から血を吐くシリュウに、いつの間にか先程の場所からシリュウの目の前に移動していた大導師がつまらなそうに最後に呟いた。
「シリュウ、君もまだまだだね」
ふっ──と、気配が消えた。
シリュウが顔をあげるとそこにはもう大導師の姿は無かった。
「死死、まだまだですか。ええ、その通りです」
立ち上がるシリュウに声がかけられる。
「──シリュウ様、ご無事でございますか?」
女性の声だ。シリュウの足元に頭を垂らし現れる。
口元を口当てで隠し全身が黒の服装のこの少女のその見た目は女忍者──くノ一だ。
「ええ、ですが怒られてしまいました。死死」
「左様でございましたか。おいたわしい」
「まだお礼を言ってませんでしたね。シトリ、貴方が迎えに来てくれて本当に助かった。ありがとう」
「いえ、ご無事……とまでは言えませんが、お命がありましたことを心より嬉しく思います」
ご無事でと言いかけ、シリュウの五体満足では無い姿を見て言葉を訂正するシトリは淡々と話す。
「死死死死、それにしても──エルルカ・アーレヤスト。次にあったら必ず、あの心臓をいただきますよ」
「私目に何かお役に立てる事があればいつでもお呼びください」
「死死、ええ是非にお力を貸してもらいますよ」
一礼し、シトリが一瞬でその場から消える。
残されたシリュウは自身の左肩の先からごっそりと無くなっている左腕を見て忌々し気に呟く──
「まずは、この腕を何とかしなければ。エルルカ──そして忌まわしき稗月倖真。いずれ必ず私の手で心臓を抜き去り魔王様の元へと献上してくれる」
死死、死死、とシリュウは笑う。
不吉な笑みを浮かべて。
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