第390話 救出依頼
アップルパイの時の長い黒髪の幼い少女が黒色の瞳に涙を浮かべながら立ち上がり、俺の言葉に返事を返してくる。
「お、お願いします! お父さんを助けてください! でも、お金が今はこれしかありません」
掌に握られてるのは銀貨が2枚と銅貨が7枚だ。
「残りは必ずあとで払います。どうかお願いします」
「いいよ、これで。無い袖は振れないしな」
銀貨2枚と銅貨7枚を受け取る。
「オイ待てよ兄ちゃん。カッコつけるのはいいが、あんた敵が何だか分かってんのか? 俺たちだって嬢ちゃんイジメたくて言ってわけじゃないんだぞ!」
「その敵ってのは?」
つっかかってきた冒険者に俺は問う。
そうだな、魔王ぐらいなら覚悟しよう。
「──魔獣だよ! 魔獣バジリスクだ! 魔獣何てとてもじゃないが相手にできん! この街の今いる冒険者総出でいかなきゃ戦いにすらならん!」
「ん、バジリスクだな。承った」
「おい正気かよ、話聞いてなかったのか……」
「生憎、これからの収入源のアテが無くてね。道徳に反する仕事じゃなければ選り好みしてる暇は無いんだよ」
そう俺が言うと冒険者の男はチッと舌打ちをし「忠告はしたからな」と言い残し去っていった。
「自己紹介がまだだったな。俺はユキマサだ」
「リナです。6歳です。お父さんを助け……ひぐ……」
「生きてりゃ必ず助けてやる。約束だ」
「私も行くよ。私はクレハよろしくね。リナちゃん」
急ピッチの自己紹介も終わり、急ぎ現場へと向かおうとした、その時だ──
「──俺も行くっスよ。ユキマッさん?」
コイツはあの時のチャラ男? どうしてここに。
「お前に名乗った覚えは無いんだがな?」
「俺って実は耳ガチで超いいんスよ」
うーん、しまったな。それは。
「てことで、俺も同伴一名様追加でおなしゃす!」
「好きにしろ。報酬は銀貨2銅貨7の三分割だからな」
「俺はチャッチャラー・グットクールっていうもんス。以後お見知りおきを、お願いしまくりんぐで」
クレハの顔は険しい。まあ、無理もないか。
「チャッチャラー・グットクール帰ってきてたのか」
「チッ、教会の薬草狩りが。あいつのせいで薬草の相場が上がらねぇんだ」
チラホラと周りからチャッチャラーの情報が聞こえてくる。薬草狩り可愛いもんじゃねぇか、俺なんて国狩り何て不遜な名前で指名手配までされてるんだぞ!
変わってくれませんかね? 薬草狩りと国狩り。
まあ、変わっても指名手配は変わらないから──〝薬草狩り〟懸賞金・金貨10000枚とか言う、何かのイベントのレアボーナスボスみたいな手配になるな。
「時間もない、行くぞ!」
リナちゃんを俺は肩車する。
「ちょ、ユキマッさん!? リナちゃん連れてく気スすか!? 流石にッベーことになりかねんでしょ?」
言葉遣いはさて置き、真剣に心配してる様子のチャッチャラーは待て待てとジェスチャーを送ってくる。
「あ? こんなに心配してんだ。早く会わせてやりたいだろ? それに俺の近くが世界で一番安全だ」
まあ、本人次第だが。と、俺はリナちゃんに来るか? と聞くと、コクンと力強く頷き「行きます」と返事を返してきた。
ハハッ、と笑い、俺はリナちゃんの頭を撫でた。
必ず助けるぞ。
そう俺はこの小さな少女に向けて勝手に誓った。
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