第389話 無駄なこと
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昼食を取り昼過ぎ、俺が向かったのは昨日の魚屋だ。訪問理由はブリを買うためだ。ちなみにこの世界のブリは海ではなく川にもいるらしく川ブリだ。
──今日こそ鍋だ鍋、冬と雪には鍋だよなぁ。
「おはよう、店主、川ブリはあるかい?」
「お、昨日の兄ちゃんか。あるよ、銀貨8枚だ」
「買った。一匹で申し訳ないが、宜しく頼むぜ?」
銀貨8枚を渡し、ブリを受け取る。
ブリは美味いよな。元々理沙の好物だった寿司。その中でもブリは中学の時にちょっと遅れてハマってたな。あー、寿司食いたくなって来たな。
異世界にも寿司あるかな? 希望薄だなぁ。
「ユキマサ君、ブリ買えてよかったね」
「おう、今日は鍋だな。ちなみにだがクレハ、寿司って知ってるか? 酢飯に魚の切り身が乗った奴だ」
「す、すし? 酢飯は聞いたことあるけど寿司って食べ物は知らないかな」
うーむ、寿司も無いのか。
異世界は海外より日本の文化が無いんじゃないか?
まあ、全くもって不思議ではないけど。
でも、酢飯はあるんだな。海鮮丼とかかな?
それもアリだな。刺身は好きなんだ。
「なら、今度作ってみるか? 寿司は作るの簡単に見えて難しいし、ちょっとコツがいるけどな?」
「あ、食べたい! 約束だよ」
クレハが笑う。これがまた可愛いので反応に困る。
牧野の奴に寿司の作り方を習っといてよかったぜ。
ギルドの前を通ると朝と比べると何やら騒がしい。
「お、お願いします、お父さんを助けてください!」
この声は、アップルパイの──
「お金も少ししか無いけど全部渡します。何でもします。どうか、どうか、お父さんを助けてください……」
朝の6.7歳ぐらいの長い黒髪の少女だ。
その声は涙声だ。必死に頭を下げ何度も何度もギルドの職員や道行く冒険者に頼み込んでいる。
「行くだけ無駄だ!」
「そうだ死にに行くようなモンだぜ」
「無駄だ無駄だ、命がいくつあっても足りやしねえ」
渋る大人達、さて何が出たんだか?
「む、無駄かもしれません……でも、諦めたくないんです。どうか、お願いします……」
幼い少女の目からポロポロと大粒の涙が溢れる。この状況で幼いこの少女が、しっかりと自分の言いたい言葉を伝え、頭を下げているのは称賛に値すると言ってもいいことだろう。
人混みを掻き分け、俺は幼い少女に声をかけ手を伸ばす。
「──よし、無駄なことを一緒にしてみるか?」
下を向いて泣いていた少女がハッと顔をあげる。
「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」
多くのギャラリーの注目も俺に集まる。
あーあ、俺の手配書、すぐ側に貼ってあるよ。
バレませんように。バレたら頗るめんどくさい。
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