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第38話 朝食



「……ん……ッ……朝か……?」


 ……俺は重たい瞼を開ける。

 ずいぶん、ぐっすりと寝てしまった気がする。


「あ、ユキマサ君。お、起きた……?」


 クレハの声がする。


「やっと起きたわね……この変態は……」


 こっちはエメレアだな。


「お、起きたなら早く腕をどうにかしなさい!」


(腕……?)


 俺は、ようやく今の状態に気づく。


 寝る前は、クレハとエメレアは俺の腕に抱きつく形で寝ていたのだが……


 今はというと、クレハとエメレアは俺の腕ではなく、俺の()()に抱きついていた……しかも、俺はまたいつの間にか、2人の肩に腕を回してしまっている。


 もうここまで来ると意識しざるを得ない状況なのだが、左右にいる2人の、それぞれ大きさは違うが、暴力的な程に凄く柔らかいものが、服越しにだが、確実に俺の胴体に、むにゅんと押し当てられている。


「わ、悪い……ッ……」


 俺は少し慌てながら手を離す。


 が……


「「…………」」


 じーっと、クレハとエメレアは、俺の顔を見ながら、未だに抱き付いたままの状態から動かない。


「……?」


 何だ? 今度はどうした?


「あ、ごめん……! 何か凄くドキドキするけど……何か居心地が良くて……ボーッとしちゃってた……」

「わ、私は一刻も早く離れたいのだけど。クレハが離れなかったから合わせたのよ……」


 二人は顔を赤くしながら、俺の胴体から離れる。


 すると、その時……


 コンコン、コンコン! 


 と、控えめなノックがされ、ドアの向こうからは、少しあわあわとした声が聞こえる。


「──お、おはよう。クレハ、エメレア? お、起きてる?」


「ええ、起きてるわ。ミリアも入ってきなさい」


 と、エメレアに呼ばれると


 パタン! と扉を開けミリアが入ってくる。


「おはよう。ミリア、よく寝れた?」


 クレハが、ミリアに朝の挨拶をする。


「うん、おはよう! それにお婆ちゃん本当に元気になってた!」


 朝から凄く嬉しそうな顔のご機嫌なミリア。


「おはよう! ミリア~!」


 ご機嫌なミリアを、むぎゅっと、朝から全力でハグを炸裂させて頬擦りしてるのは、勿論エメレアだ。


「あ、お、おはようございましゅ……す!!」


 エメレアにむぎゅられながらも、俺と目が合ったミリアは、俺に挨拶をしてくる。


「ああ、ミリア。おはよう」


 俺は、少し寝癖の付いた髪を軽く掻きながら、べッドを降り、ミリアに挨拶を返す。


「あ、ユキマサ君。今日こそ、約束のおにぎりの朝食用意するね!」

「ああ。楽しみにしてる」


 やっぱ、朝食は米だよな!


「で、ユキマサ? 着替えるから出ていきなさい」

「あ、あぁ……分かった……」

 

 返事をするや否やエメレアに「は・や・く出ていきなさい!」と言われながら、ぐいぐいと両手で押され、俺はエメレアに部屋から閉め出される。


(──俺も着替えるか……)


 と、閉め出された俺は〝アイテムストレージ〟から、着替えを取り出し着替える。


 ちなみにだが〝アイテムストレージ〟から服を取り出す時に、体に合わせて服を取り出し、同じタイミングで着ていた服をしまえば、一瞬で着替えが可能だ。


 それこそ、ゲームの()()()()()()みたいに着替えができる。周りからみれば──パッと俺の服だけが変わったように見える事だろう。


「……あ、あれ? も、もう着替えたんですか!?」


 目をパチクリとさせながら驚くのは、元々着替えてから部屋に来た為、着替える必要がないので、俺がエメレアに閉め出された数秒後には、クレハの部屋から出てきたミリアだ。


「〝アイテムストレージ〟を使ったんだ。一瞬で着替えられるぞ?」

「そ、そんな使い方もあるんですね……!」


 ほわぁ……と言いながら、ミリアは何かぽわぽわとした感じで驚いている。


「──おぉ、ユキマサ、起きたか? おはよう」

 

 すると俺は、ミリアと一緒で俺達よりも先に起きていた人物に、キリッとした声で話しかけられる。


「おはよう、システィア。というか、髪を下ろしてると結構印象が違うな?」


 寝起きだからだろう。今のシスティアは、金髪の髪を、いつもみたいにポニーテールに纏めておらず、少し印象が違う。


 もしこれで、白いワンピースでも来ていれば、十分、何処かのお屋敷のお嬢様にでも見えるだろう。


「そうか? 自分の部屋では、いつもこんな感じなんだが……変だろうか?」

「いや、どう見ても似合ってるぞ? それを変とか言う奴がいれば、そいつの頭のが変だから安心しろ」


「む、そう誉められると、髪を纏めるのが、何だか()しい気がするな? でも、すまない──私は、出勤の時は髪は纏めると決めているんだ……」


 くっ……と、何故か、本当に悔しげな様子で、真剣に髪を纏めるのを惜しがっている。


 ちょっとコント染みて見えるが、別にノリ良くボケているわけでは無く、システィアは至って真面目だ。


(そういやコイツも少し天然だったな?)


「いや、俺に気にせず髪は纏めろよ?」


 俺は「どうしたものか……」と、まだ髪を纏めるか否か、悩んでいるシスティアを(さと)していると……


「見て、クレハ……? あの〝タラシスト〟が、今度はシスティアさんを(たら)し込んでるわよ?」

「……ほんとだね。(たら)し込んでるね」


 着替えを終えた、クレハとエメレアが部屋から出てくるなり、2人してジトッとした目で俺を見てくる。


 それと、(たら)しに至っては、クレハもエメレアと同意見らしく、特にフォローも無く毎回肯定されている。


「ミリアこっち来なさい。(たら)しが感染(うつ)るわよ!」

「え……っ……? う、感染るの?」


 と、頭に「?」を浮かべているミリアは、俺とエメレアの顔を交互に見ながら、あわあわとしてる。


「あ、こら。ミリアが困っているだろう?」

「う……ごめんなさい」


 システィアに叱られ、エメレアは瞬時に黙り込む。


(確か、システィアの言う事も良く聞くんだったな……)


「あ、というか朝食準備しないと!? あと、お婆ちゃんは?」

「お婆ちゃんなら、お米を炊いてるよ?」


 ミリアが米情報を教えてくれる。

 通りで、さっきから米の良い匂いがすると思った。


「本当! 私ちょっと手伝ってくるね!」


 パタパタとクレハは台所に向かう。


 エメレアが「あ、クレハ私も手伝うわよ」と言ってるが「大丈夫だよ、皆は待ってて」とやんわりと断られている。


(おにぎりは楽しみだが、味噌汁とか無いかな? あと納豆とか卵とか……あ、卵は確かあったな?)


 確か、昨日チラッと〝料理屋ハラゴシラエ〟で、卵料理を食べてる奴をみかけた。


 もし次に、何かリクエストを聞かれる機会があればそこら辺を頼んでみるか──? と、俺は考えながら、朝食のおにぎりを楽しみに待つのだった。



「お待たせ!」


 クレハと婆さんが、朝食を持ってきてくれる。


 メニューは大皿いっぱいのおにぎりと……


(──これは〝わかめスープ〟か?)


 流石に味噌汁は無かったが、スープは嬉しいな。おにぎりって、食べてると汁物欲しくなるもんな。


「いっぱい食べておくれ」


 そう言いながら、婆さんがお茶を煎れてくれる。

 (いた)れり()くせりだな。ありがたい。


 そして皆で席に付き──


「「「「「「いただきます!」」」」」」


 と、朝食を取り始める。


 俺は、早速おにぎりをパクッと食べる!


 うん、美味い!!


 ちなみに、砂糖と塩を間違えるだとかの、料理のお約束的な展開も特に無い。

 

 やっぱ、日本人は米だよなー。


 満足そうに俺がおにぎりを食べていると、


「ど、どうかな?」


 隣に座るクレハが、味の感想を聞いてくる。


「凄く美味いぞ。毎日でも食いたいぐらいだ」


 俺はクレハに惜しみ無い称賛を贈る。


「ほ、本当に! 良かった。そ、それに、ま、毎日って……何か……それって……およ……」


「ふふ。よかったな、クレハ! それにしてもユキマサは本当におにぎりが好きなんだな?」


 クレハが『よかった』と言った後、小さい声で何か言ってたが、システィアの声で(さえぎ)られてしまった。


 確か『……それって……およ……』とか何とか……

 およ……? って何だ?


 それともミリアみたいに何か噛んだのか?


 聞き返そうかと思ったが……

 クレハは少し顔を赤くしながら、何だか幸せそうに、わかめスープを(すす)っていたので、やめておいた。


 このわかめスープもお婆ちゃんの味なのか?


「おにぎりというか、和食は全般的に好きだぞ?」

「……和食?」


 システィアが首を傾げる。婆さんやミリアも〝?〟と言った様子だ。エメレアに至っては「女の名前じゃない?」とか言ってやがる。こいつに至っては全く話し聞いてないだろ?


「俺の故郷だと、おにぎりとか……みそ汁や、寿司や、そば、後は漬物とかを、和食って呼んでたんだ」

「おにぎりと漬物は知っているが、他はあまり聞いたこと無いな? それに、ユキマサの故郷か──少し気になるな。どこら辺にあるんだ?」


 お、異世界にも漬物はあるのか?

 後でクレハに聞いてみよう。


「この〝エルクステン〟からだとかなり遠くだよ」


 遠くの国と言うよりは遠くの世界になるのか?


「釈然とし無いわね……」


 俺のハッキリしない答えに不満気なエメレアは、先程から美味しそうに両手におにぎりを持って、もぐもぐとおにぎりを食べているミリアに「あ、ほら。耳にご飯粒付いてるわよ?」と甲斐甲斐しく世話を焼いている。


(相変わらず面倒見がいいな。てか、ミリアは何で耳に米粒付いてるんだよ? 行儀も良く食べてんのに)


「スイセンの国の生まれかと思っていたが……あ、すまない。だとしたら、あまり聞かない方がいいか?」


 スイセンの国? そういや、ギルドであった〝ショタコン淑女〟こと──クシェリが、俺の和服の事を、()()()()()だとか、そんな事を言っていたな。


 察するに、和風文化の国なのか?


「残念ながら、()()()()とか言う国は知らないぞ?」


 システィアの態度からすると〝スイセンの国〟は何か訳ありみたいだな?

 しかも、あまり聞かない方がいい感じの。


「〝スイセンの国〟は〝7年前の魔王戦争〟で滅びた国の1つだよ。生き残った人達も、散り散りになって他の国に移り住んだみたい──たまに〝エルクステン〟でも、それっぽい人とか見かけるよ?」


 すかさず、クレハが補足をしてくれる。


「なるほど。そういうことか……」


 俺も街で、チラホラと和服みたいな服を着た奴を見たのはそいつらか。


「──っと、もう、そろそろギルドに向かわないとだな。ユキマサはこの後はどうするんだ?」


 システィアが少し時間を気にし出すと、クレハ達は「あ、本当ですね!」と、少し急ぎ目に朝食を取る。


「俺は武器屋に行こうと思ってる」


「──ちょ、ちょっと待ってユキマサ君! それってエルルカさんに会いに行くの!?」

「いや、普通に買い物だが……」


「むぅ……そ、それならいいけど。まあ、それに()()()は断るって言ってたしね……」


 目を少し細めながらクレハは俺を見てくる。


()()()と言うと……エルルカに『私と夫婦(めおと)になりなさい』って言われたやつか……?)


「この……キザッ(たら)しは……クレハを悲しませたら許さないって言った傍から……」


 向かいに座り、睨んでくるエメレアも、不機嫌そうにムクながら俺を見てくる。

 まあ、蹴られたりしないだけ、まだマシか。




 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

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