第372話 輝く肉
「暖炉、火付けていいか?」
「あれ、ユキマサ君、寒い?」
「日が暮れて肌寒いぐらいだな。何より俺、暖炉ってあたったこと無いから付けてみたい。ダメか?」
ちょってテンション高めの俺は二人に問う。
「今の時期には早い気がしますが、いいんじゃないですか。暖炉の火付けは私がバイトでやった事があるのでお任せください」
「お、マジか! 頼んだぜ、シナノ!」
暖炉は良いよなぁ。雪でも降らねぇかな。
でも、雪が降ったらシナノがまた騒ぎそうだな。
──さて、ここで鉄板の登場だ。
狭めのキッチンのコンロ型の囲いに〝火の結晶〟をセットし、鉄板を熱する。
毎度のごとく塩胡椒で下味を付け、最初は強火、後は弱火でゆっくりと焼いていく。
今回はレア焼きだ。ちなみに余談を話しておくと解体した時に俺の回復魔法を殺菌代わりに使っているので、理論上は、この肉は生でも食べれる。
まあ、焼いた方が俺は好きだけど。
ニンニクと醤油、砂糖、塩、みりん等でステーキのたれも製作した。
一応女子連中にはニンニクはどうかと聞いたが〝浄化の結晶〟で臭いの除去が可能とのことですんなり使用を了承した。
ニンニクの臭いまで消せるんだな、あれ。
それにしても〝大猪の肉〟は昨日食べた縞牛や華牛と比べてもランクが6つは違うな。肉の脂のノリとか香りが桁違いだ。比喩じゃなく肉が輝いて見えるよ。
「輝いてます。お肉が眩しいです。何ですかこれ?」
「不思議だよな。肉って輝くんだな」
正確には上質な脂が照り返しているのだろう。シナノは「食べるのが勿体ないです」と呟いている。
大猪のステーキ、サラダ、白米、野菜の塩スープと、かなり豪華な食卓となった。終始シナノが目を輝かせ黙々と、且つ味わって食べていた。
クレハも頬に手を当て「おいし~っ♪」とご満悦だった。
「──い、生きてて良かったです~~♪」
大満足です。と、シナノは息を吐く。
「大袈裟だな。まあ気持ちは分からんでも無いが」
世辞抜きで文句無しに美味い。飽食の国、日本でもこんな肉は食べられないだろう。猪と言ってるが、味や食感は牛に近い。何故だろうな? 不思議だ。
じー。
物欲しそうなシナノ。
「何だ?」
「いえ、何も……」
「これか?」
取り出したのは酒だ。
しかもエルフ酒。高価な酒だ。
「!」と、シナノは待ってましたかのように顔を緩ませる。
あーあ、この味を覚えると苦労するぞ?
まあ、下手な安酒を飲まなくなるかもな。
でも『この安酒が美味いんだよ』と、楽しそうに安酒を煽ってた親父を思い出すから、安酒が悪いとは口が裂けても言えんが。
こっちもどうだ? と、試しに安い酒。一升瓶で銀貨1枚の酒をシナノに進めてみる。クレハにも進めたが、クレハは今日も飲まないらしい。
「あ、ホッとする味です。エルフ酒よりも格段に味や香りの全部が劣る味ですのに何故でしょう?」
首を傾げ、自分にしっくり来た様子の酒を本当に不思議そうにするシナノに俺は少し笑ってしまう。
「まあ、コスパはいいんじゃないか?」
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