第355話 シナノの家4
〝アイテムストレージ〟から縞牛の薄切り肉を山盛りで取り出すとシナノがポカーンと口を開ける。
ん、どうした? ──〝アイテムストレージ〟は、もうシナノは見ただろ? じゃあ、何に驚いている?
「……です……」
「ん?」
よく聞き取れなかった。
耳は良い方なんだけどな?
「お肉です!」
がしっと、俺の両肩をシナノが掴む。
「溢れる、肉が溢れるから離せ」
「も、もしかして、お肉も、お、奢りですか!」
「……」
無言。俺はちょっとシナノをからかってみる。
『ガーン!』と、分かりやすくショックを受けるシナノ、あ、面白いなコイツ。
意外とからかいがいのある奴なのかもしれん。
「いいです。いいんです。私にはこの不思議な美味しそうな香りの鍋がありますから! 言ったことは取り消させませんよ。取り消し、ダメ、絶対です!」
肉の入って無い、すきやきを死守するシナノ。
「ユキマサ君ー? からかい過ぎだよ!」
「悪い悪い、つい、楽しくなってな?」
「!? ?」
「肉も好きなだけ食べて良いぞ、シナノ」
「本当ですか! 言質取りましたよ!」
「すきやきに肉を入れて食べるんだ」
「なるほど、この中にですか」
「だから、ちょっと退いてくれ」
「む、分かりました。信じましょう」
自身の背後に死守していた、すきやきから渋々ながら離れるシナノ。
3人ですきやきを囲むように座り、縞牛の肉を入れる。
「お前ら生卵は食えるか?」
「あ、私は大丈夫」
「私に食べ物の好き嫌いはありません」
と、許可も出たので、俺はお椀に卵を落とし、サービスでかき混ぜてやり、二人に配る。
「溶き卵?」
「すきやきには卵を絡ませて食べるんだよ」
「変わった食べ方ですね」
手本がてら、肉を1枚鍋から取り、卵に絡ませ、口に運ぶ。
(うん、美味い。久しぶりに食ったな)
この卵を絡めるのが好きなんだよ。俺。
「ほら、シナノ食ってみな? ダメだったら無理する必要は無いぞ。他の物を用意してやる」
「いえ、絶対食べます。遠慮はしませんよ?」
「おう、どんどん食いな? お椀貸してみろ、装ってやる。何が良い?」
「お肉! お肉がいいです! 大盛りで!」
「よし、任せろ! 残すなよ?」
「お肉を残すわけありません。愚問です」
言葉通り肉を多めに装ってやると、シナノは──
「わ、お肉です! お肉何て3年前に偶然見つけた豚鹿の死骸をハイエナした時以来です」
と、大喜び。てか、3年も肉食べてなかったのか。
「しかも、その豚鹿の肉は腐ってて美味しくなかったです。3日お腹を壊しました」
本当に懲りたのか、もう死骸は漁りません。
と、シナノは深く項垂れるのだった。
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