第349話 逃走経路
煙幕で辺りが見えなくなった。
だが、こんな物、数秒の時間稼ぎにしかならない。
「こっちです。早く」
煙幕少女が手招きした先の地面にはマンホールぐらいのサイズの隠し扉──地面に同化するように作られた扉をパカッと開け少女はその中へ入っていく。
隠し扉の中の手すりを降り、意外と広い通路を歩いていく。逃走経路としては上出来だな。
五分ぐらい歩き、また別の手すりを上る。
出た先は──森。さっきとは別の森だ。
すぐ近くにはボロい小屋(?)みたいな物がある。
「ボロボロの人の家がそんなに珍しいですか?」
「──! わ、悪い。そういうワケじゃないんだ」
「いいですよ。別にボロいのは確かですから」
少女が俺の方を振り向く。失礼だが、竹箒みたいな、お世辞にも整えてるとは言えないボサボサの薄オレンジ色の長い髪に童話のような継ぎ接ぎのロングワンピース。そんな少女が俺を怪しそうな目で見る。
まあ、俺は指名手配犯だからな。間違ってない。
「自己紹介が遅れたな。俺はユキマサだ」
「そうですか。ユキマサさん。私はシナノと申します」
「そうかシナノ。改めて助けてくれてありがとな」
いやぁ、助かった。
六魔導士と戦闘になる所だったよ。
「ああ、それですか」
はいっと、掌を上に向け手を俺に差し出す。
お手かな?
「締めて銀貨7枚と銅貨2枚です」
「うん、あ、ああ金か?」
「他に何があるんですか? 煙幕が銀貨7枚。壊れた草笊が銅貨2枚です。私への迷惑料は今回は私も助けていただいたのでいただきません」
「分かった。弁償させて貰う。迷惑料は助かるよ。まあ、俺のせいっちゃ俺のせい何だけどな?」
「じゃあ、迷惑料も取ります。銀貨1枚です」
「ある意味、正直な奴だな。はぁ、まあいい。俺も悪かったと思ってるしな。銀貨1枚で済めば安いものだ」
「安いですか、ではもう少しいただきます」
「オイっ!」
「……冗談です。銀貨8枚銅貨2枚です」
冗談ぽくないんだよなぁ。
そう苦笑いしながら俺は〝アイテムストレージ〟から銀貨8枚銅貨2枚を取り出し、シナノに渡す。
「アイテムストレージ!? 一体何者ですか?」
「んー、えーとだな……」
「あ、いいです、いいです! 聞きたくありません! ていうか、あんなのに追い回されてる時点で関わりたくないです!」
わーわーと耳を塞ぎ騒ぎながら六魔導士をあんなの呼ばわりするシナノ。
まあ、六魔導士と気づいてるかは知らないけど。
「でも、その割には助けてくれたじゃねぇか?」
「あれは貴方が私を助けてくれたから流れです」
ピシャリといい放つシナノ。
「はぁ、もう少し迷惑料をせしめればよかったです」
「聞こえてるぞ?」
まあ、それはいいとして、クレハを探さないとな。
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