第347話 夜営
「いただきます!」
「いただきます」
クレハと俺は手を合わせる。
「う~ん! 美味しいっ!」
はむっとご機嫌でステーキを口にしたクレハからは頭に「♪」が見える程に笑みが溢れる。
「そりゃよかった。世辞でも嬉しい」
「もー、お世辞じゃないよ」
──てか、このクリムゾントマトだったか?
マジで美味いな。日本でフルーツトマトを初めて食べた時も甘くて驚いたが、これはそれ以上に甘い。
糖度計算したら15はあるんじゃないか?
メロンとか、そのレベルの甘さだ。
もしゃもしゃと先にサラダを頬張る俺はトマトの甘さに目を見張る。
ミリアに山ほど貰っちまったが普通に買ったらこれマジで高いんじゃないか? 高くても納得の味だし。
と、考えてた時だ──
「キシャアァァ!」
でっかい目玉のコウモリみたいな羽の生えた魔物が群れで現れる。10匹はいる。
ったく、食事中だってのに。
「!」っと、食べる手を止めるクレハの向かいで、俺は食べ終わったサラダの器を地面に置き、また〝魔力銃〟を二丁取り出す。
──五重奏!
両手に持った魔力銃に魔法陣が浮かび上がり、その魔法により一発の発射で五点バーストが可能になる。
五点バースト✕二丁銃で計10発の魔力弾を放ち、魔物を一掃した俺はドロップアイテムを回収する。
「一ツ目バットだね。夜、鳴き声が結構うるさいんだ」
「食事中だってのに騒がしい奴等だ」
俺とクレハは中断した食事を再開する。
「──ご馳走さまでした! 美味しかったぁ!」
「ご馳走さま、喜んで貰えてよかったよ」
ご機嫌のクレハは礼儀正しく手を合わせる。
「あ、ユキマサ君、お金、食事代いくらだった?」
「いや、取らねぇよ。気にすんな」
「そんな、悪いよ。本当なら私が全部払いたいのに」
ブンブンと手を振るクレハは本当に申し訳なさそうな顔になる。
「言ったろ、俺に気遣いは不要だ。旅に付き合わせちまってるしな。一日三食ぐらいは保証してやる」
「付き合……そ、そっか/// じゃ、じゃあ、お言葉に甘えます……ホントにいいの?」
「いいよ。てか、それぐらい出させてくれ。流石に俺こそ食事ぐらい出さないと、悪い」
旅は旅でも、お尋ね者の逃亡旅だ。
つーか、俺よく言えたよな。
一緒に来てくれだなんて。あーうん。
「ユキマサ君こそ、私に気を使ったらダメだからね!」
「ん、分かった。でも、ある程度の生活に使う金銭と食事は俺に任せろ。そこは譲らん」
「うん、ありがとう。お言葉に甘えます。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げるクレハ。
律儀だな。〝親しき仲にも礼儀あり〟──
昔、親父がよく口にしていた言葉を思い出す。
その後「片付けは私が全部やるね」と、言うクレハに食器や諸々の洗い物を任せ、俺は焚き火の番をする。
キャンプみたいでいいな、焚き火は。
──洗い物が終わると、クレハは薄い毛布に包まり、ウトウトし始める。
「少し寝ときな、見張りは俺がやるから」
「うん、ありがとう。じゃあ少し仮眠取るね」
「ああ、おやすみ」
数分後、クレハは可愛く寝息を立て始めた。朝から歩きっぱなしだったからな、疲れたのだろう。
パチパチと音を立てる焚き火に木を足しながら俺は空を見上げる──
(いい月だ。この世界の月はより風情があるな)
そうして静かに夜は更けていく。
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