第342話 願わくば
*
俺たちが反対側の街を見て歩いていると──
「ん、あれ、ミリアじゃねぇか?」
ウララおばさんの団子屋に水色の長い髪、水色のロングスカート姿のミリアを発見する。
「あとエメレアちゃんと誰だろ? 冒険者?」
「──……っ!?」
(あれは恐らく……ミリアの父さんの冒険者パーティー──〝吟遊詩人〟のメンバーだ)
会っちまったのか、エメレア。
「おい、エメレアの様子はどうだ!?」
「エメレアちゃん? エメレアちゃんは何かちょっと元気無いかな。あと悲しそう。何で……?」
店の影に隠れながら、俺とクレハはエメレア達の様子を覗き見る。
「クレハはエメレアの過去を知ってんだろ?」
「え、うん。ユキマサ君も聞いたの?」
エメレアが俺に自分の過去の話をしたらしいことに驚いた様子のクレハ。
「ああ、クレハはミリアの父さんの冒険者パーティーの名前を知ってるか?」
「ううん、知らない」
クレハは〝それとこれが何の関係があるのだろう?〟と言った不思議そうな顔をする。
「俺は聞いた。ミリアからな、たまたま不意にだが」
ミリアはエメレアの過去を知らない。
エメレアの過去を知る、クレハとエメレアはミリアの父さんの冒険者パーティーの名を知らない。
奇妙な偶然が話を遠ざけた。
「ミリアの父さんの冒険者パーティーのチーム名は──〝吟遊詩人〟だ。今ミリア達と一緒にいる奴等が十中八九そうだろう」
俺は告げる。
クレハが事の内容に気づくかは知らない。
「ば……〝吟遊詩人〟って、エメレアちゃんを〝大都市エルクステン〟に送ってくれた人達だよね!? エメレアちゃんも凄くお世話になったって、いつかまた会いたいんだって……」
「エメレアの呼んでいた、リーダーさん。あれはミリアの父親だ」
「そんな……ミリアのお父さんはもう亡くなってるし。それにじゃあ、エメレアちゃんと仲が良かった治療術士のシュナさんは……」
「亡くなってる筈だ。ミリアの話にあった、亡くなった治療術士ってのはシュナと言う人物のことだろう」
「悪いが行くぞ? 今、あいつらに会うわけにはいかない。エメレアには願わくば知らないままでいてほしかった。まだ結果がどうなるかは分からねぇが……」
──エメレア、頑張れよ。
ごめんな。こんなことを思うことしかできなくて。
「私、帰ったらエメレアちゃんと、沢山お話する」
真剣な口調の少し泣きそうな声だ。
「そうか、いっぱい話してやれ。きっとエメレアは心から喜ぶ筈だ」
「うん。そうだといいな、そうする」
俺とクレハは誰にも見つからないように、その場を去った。予定より少し早いが〝ルスサルペの街〟を後にしたのもそれから直ぐのことだ。
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