第340話 水と空と豚
*
──翌日。
──〝ルスサルペの街〟街の宿屋──
「ユキマサ君、朝だよー」
「……もう朝か。つーか、昼まで寝ようぜ」
寝ぼけ眼を擦る俺は甘美なる二度寝に入ろうと試みる。
「ダメだよ。朝は起きる! 三文の徳だよ」
つんつん。と、指で頬をつつかれる。
うーん、惰眠を謳歌するのは、まだ先のようだ。
「ま、起きるか、家も探さなきゃだしな」
「家?」
俺の発言にクレハは不思議そうな顔をする。
「ああ、家だ。家、買おうぜ!」
*
「さて、異世界で家を探してる、って、どこ行きゃいいんだ? 不動産屋はあるのか?」
「うーん、この街には無いかも。そもそも、ここでお家を買ってどうするの? ていうか、ユキマサ君、旅に出るんじゃなかったの?」
フード付きマントを被る俺の隣を並んで歩くクレハが、至極真っ当な疑問を投げかけてくる。
「別に移住するワケじゃないさ。俺には世にも便利な〝アイテムストレージ〟があるからな? 家を持ち運ぶんだよ、持ち運ぶ家、面白いだろ?」
「え……そ、そんなのありなの……!?」
「理屈上は有りだよ? まあ、家一軒を〝アイテムストレージ〟仕舞えるかは分からないから、まだ確定ってワケじゃ無いけど」
「うーん……何だができちゃいそうかな」
「その方がクレハも楽だぞ。野宿ってことが無くなるワケだからな。雨風防げる壁と屋根があるってのは贅沢品だ。まあ、ちょっくら旅に出るって言っても、長旅なんだ。少しの贅沢は多めに見てほしい」
長旅になりそうだ。現最終目的は魔王の討伐。
それに異世界の旅ってのは響きも悪くない。
一人じゃないし、クレハには改めて感謝だな。
「あー、うん。それは凄い贅沢だね。街に寄れない時なんて、普通なら竜車の荷台辺りが最高条件だもん」
「竜車の荷台も意外と快適だったな〝アイテムストレージ〟から、布団を出したら、フォルタニアが驚いていたよ」
「……ユキマサ君、フォルタニアさんと一緒に寝たの?」
じー。っと、冷たい視線のクレハ。
「いや、普通に寝ただけだぞ? へ、変なことはしてない」
いや、キワどい所もあったけど!
一線は越えてない。
「ふーん……ふーん……ユキマサ君、私、あれ食べたい」
ムスるクレハが指を差すのは、店先で焼いて売っている何とも香ばしく美味しそうな香りの豚バラ串だ。
「朝から肉かよ、まあ俺はいいけどよ」
これでクレハの機嫌も治るなら安いもんか、と俺は二本で銅貨6枚の串焼きを購入する。
日本円だと、1本300円ってところか。屋台として考えたら、かなり安い部類だな。俺の思う平均価格の約半額だ。また、日本相場で考えるってのもアレか。
「これ空豚か?」
「ううん、水豚だよ」
買ったばかりの串焼きを朝から「♪」と、美味しそうに食べるクレハにそんな質問を投げると、予想外の返事が返ってきた。
「おいおい、この世界は水の中にも豚がいるのか?」
「え? いるけど……? いないのユキマサ君の世界には水の中に豚? 美味しいよ?」
この世界には至る所に豚がいるのか。
水豚、空豚、普通に陸にいる豚。空飛ぶ豚もシュールだが、水の中にいる豚も十分にシュールだな。
泳いでたら豚が出た何て幼少期にでも大群で見たら軽いトラウマになりそうな光景だ。
「……水の中にはいないな。ちなみに空にもいない」
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