第338話 エルルカの葛藤
──中央連合王国アルカディア
中心部・大王宮──
「エルルカ様、お帰りなさいませ」
黄緑色のセミロングのエルフの女性が丁寧なお辞儀でエルルカを出迎える。
王宮を入って直ぐの廊下で二人は話を始める。
見回り中の兵士に出くわしたが、エルルカを見ると、ビシッと敬礼をし、そそくさと去っていった。
「ええ、ただいま。それにしても〝魔力枯渇〟後の全力ダッシュは少し堪えるわね」
エルルカの全力ダッシュとは、最早ダッシュなどと言う可愛らしいレベルの速度ではない。
マッハや高速移動、そんな言葉のがよく似合う。
「リュセル、で、例の件はどうなってるの?」
「〝国狩り〟の件でしょうか?」
「その呼び方は止めなさい。国狩り? 何の冗談かしら? むしろ、あの国を救ったのはユキマサよ。少なくとも、今の私ではウルスラには勝てなかったわ」
鋭い目付きでエルルカが言う。
少なくない怒りの色も見える。
「女王には大クレームを入れて来たわ。どうやら事の発端は最高貴族のハンジ家が関わってるらしいけど、私には関係無いわね。三王はどこ?」
「今はジークパング様は不在です。丁度、昨日ヴァンドール様がお見えになってますが、今回の件には無関係かと」
「無関係?」
「今回の一件はシアナ女王陛下と最高貴族のボルス・ハンジ様の両意見の合意で指名手配されています」
「三王の一人と最高貴族、人を一人陥れるには十分すぎる権力ね」
「それとですが……」
口ごもるリュセルにエルルカは眉を寄せる。
頭には冷や汗も掻いていた。
「何?」
「ユキマサ殿の確保に〝仙極〟が動きました」
「っ……なんですって……数年も〝アルカディア〟から出ていない。あの男が何故こんな時にばかり?」
ちょっとやそっとのことでは驚かないエルルカが焦りを見せる。
「非公式ですが出回ってる噂──〝黒い変態〟という異名を聞いて動いたそうです。あの方はそういった者が大嫌いですから」
「……」
「……あの、エルルカ様?」
「何の為の王国魔導士団よ。馬鹿な権力の味方なんて私はごめんよ」
はぁ、っと、息を吐くエルルカ。
低い声音中に怒気が含まれてるのに気づいたリュセルは身体を縮ませる。
「あなたに言っても何も始まらないわね。この一件は私に取ってとても重要なこと、誰に何と言われようが、意見させてもらうわ。手始めにヴァンドール陛下にでも私の話を聞いて貰おうかしら、丁度タイミングよく今の時間は夜だしね、善は急げ、行ってくるわ」
すると背後から一人の女性が近づいてくる。少し警戒をしていたエルルカだが、その人物が誰なのかが分かると落ち着きながら、そちらに目をやる──
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