第331話 門出と再会
──大都市エルクステン
壁外・壁より約3km地点──
「爆発!? な、何!?」
「ガーロックが追ってくると思ったんが、何か予想外の事が起きてるみたいだ。俺的には好都合だが」
大気が揺れた──壁の辺りで誰かが戦ってるようだ。一人は恐らくガーロック、もう一人は分からん。
「何にせよ、今は逃げるぞ! クレハ、しっかり掴まってな!」
お姫様抱っこのクレハとクレハの巨大なリュックを俺が背負い、夜道を駆けていく。
月明かりが照らす中、森に入ると俺たちに並走して走る影がある。
人──じゃない、何だ!? 回転してる?
「ジャイロウルフ!? しかも群れ、囲まれたよ!」
ワオォーン! と狼の声が森に響く。
月明かりの夜に映えるじゃねぇか。狼男とか出たりしてな? ──って、確かこの世界には狼人族って種族がいるんだったな。
第一騎士隊長のティクタスが記憶に新しい。
森に紛れた群れの中から、3匹程がこちらに飛びかかってくるが、俺はそれを最小限の動作で避ける。
「クレハ、このまま〝ルスサルペの街〟に行こうと思うが、この方向であってるか?」
「あ、えっと、少しズレてるかも! 本当なら渓谷に沿って進んでくのが一番の近道なんだけど、空竜じゃないから、山を越えないとだから……っ!?」
俺に返事を返しながら、わわっと、クレハが慌てる。その目線の先からはジャイロウルフが口から吐いた火炎弾が俺たちに迫る。
「ん、ようするに渓谷を進めばいいんだな?」
地面を強く踏み込み、俺は辺りの木々よりも更に高く跳躍する。月が綺麗だ。満月かな?
にしても、明るい──以前にも思ったが、日本で表すならスーパームーンか、それ以上の明るさだ。
足に魔力を纏い、空を踏み込み移動する。
「狼は撒けたな、流石に空は飛んでこないだろ」
いや、異世界だし、分からんけど!
少なくとも俺が知る限りの狼は空は飛ばない。
でも、確かこの世界の豚は空を飛ぶとフォルタニアに聞いたな? 空豚とか言ったか? ファンタジーってよりは、何となくメルヘン方面だよな。空豚。
*
──大都市エルクステン
大砦の門・付近──
「み、ミリアぁ! 心配したわ、クレハはどうなった? ユキマサは間に合った?」
ミリアとの通常の再開を果たしたエメレアがギュッとミリアを抱き締めながら話す。
「うん、大丈夫だよ。全部、上手くいったよ」
エメレアだけに聞こえる小さな声でミリアが嬉しそうに言う。
「ミリア、さっきの壁の外の爆音、聞いた? まさか、ユキマサが戦ってるんじゃないわよね!?」
壁を振り替えるエメレアは少し焦った様子だ。
「私、見てきたけど、違った。の……白娘さんが、領主様の足止めをしてたよ」
「な、なるほど。白娘さんを動かすなんて……女誑しは健在みたいね。全く……」
「エメレア、クレハが行っちゃって寂しい?」
「勿論、スッゴクく寂しいわ。正直、泣きそうかも……ミリアは?」
「寂しくないって言ったら嘘になるけど、大丈夫だよ──だって、また会えるもん!」
えへへ、とミリアは花が咲くように笑う。
「そうね、また会えるものね」
エメレアはミリアと一緒に笑う。
そうだまた会えるのだ、こんな嬉しい事は無い。
「ミリア、ご飯でも食べて帰りま──
その時だ、不意に声を掛けられた。
「──あれ? エメレアちゃん……?」
男性3人、女性2人の5人組の中の黒髪ショートの胸の大きな泣きボクロの女性だ。
半信半疑と言った感じで話しかけて来る。
エメレアは1秒、2秒と考えた後「!!」と、驚いた顔をし、その女性の名前を呼んだ。
「き、キサラギさんっ……!!」
先程、ユキマサとの過去話の話題に出したばかりの冒険者パーティー〝吟遊詩人〟のキサラギであった。
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