第31話 酔っぱらい
*
「……クレハの家の天井ね」
エメレアは目を覚ますと同時にそんな事を呟く。
「お目覚めか? 酔っぱらい?」
ぐっすりと寝ていたエメレアが目を覚ましたのは、日が暮れ始め、辺りが薄暗くなってきた頃だった。
「何で、貴方がクレハの部屋にいるのよ? それに、目が覚めて最初に見る顔がユキマサだ何て最悪だわ……」
そう言うとエメレアはベッドから半身を起こす。
「その様子だと、酔いは覚めたみたいだな?」
顔色も悪くは無さそうだし、
さっきみたいな変なテンションでも無い。
「う……クレハとミリアは何処よ?」
エメレアは少し恥ずかしがる様子で、俺と目が合うと、そっと視線を逸らす。
「すぐ戻って来る。礼はクレハとミリアに言え」
すると──丁度そのタイミングで、部屋の扉がパタッと開き、クレハとミリアが部屋に入ってくる。
「エメレアちゃん、よかった! 具合はどう?」
「エメレア、よかった! 心配したよ!」
目を覚ましたエメレアに、二人はホッとした様子で声をかける。
「クレハ……ミリア……! ごめんなさい! 本当に迷惑かけたみたいね……反省してるわ……」
エメレアは本当に申し訳なさそうに頭を下げる。
「エメレア、調子はどう? ロロさんに渡された〝ココルの実の原液〟を飲んじゃってたみたいだけど……」
ひょこっとエメレアの顔を覗き込みながら、先程の〝ココルの実〟の件の話をするミリア。
「言われてみれば……確かにポーションの容器に入った〝ココルの実の原液〟を対ヒュドラ用に何個か渡されてた気がするわ……でも、結局はヒュドラの〝変異種〟には効果は無かったけどね……」
「匂いを嗅いだが、何であれに気づかないんだよ?」
「だだだ、誰のどこの匂いを嗅いだのよ! 変態!」
バッ! っと、両手で自分の身体を抱き締めるようにして、エメレアは顔を赤らめる。
「──ポーションの容器だよ! つーか、今の話の流れで分かるだろ! お前、まだ酔ってんのか!?」
「む、仕方ないじゃない……テンパってたんだもの」
悪いとは思っているのか、声にあまり力が無い。
「そ、それと……ユキマサ……私が酔ってた時に言った事は忘れなさい……い……いいわね……?」
「どれのことだ?」
色々と言われた気がするので俺は聞き返す。
「全部よ! 全部!!」
「──あ、あの……〝ココルの実〟は別名〝気持ちの実〟とも言われれてですね。食べると酔っぱらったり、あと普段はあまり言えない本音みたいなのを口に出して言っちゃうみたいなんです……だからさっき話してた時の事は多分……エメレア的に恥ずかしい所があるから、忘れてほしいんだと思います……です……」
「ああ……ミリア……そんなハッキリ言わないで……」
ミリアに全て見抜かれてしまったエメレアは「ああ……違くないけど……違うのよ……」と項垂れてる。
「……分かったよ。聞かなかった事にしておく」
「ま、まあ、それは置いといてさ? エメレアちゃん、お腹空いてない?」
と、クレハが少し話題を変える。
「言われてみれば、お腹空いたわね……」
「よかった。エメレアちゃんが起きたら、4人で何処かにごはん食べ行かないか? って、話をしてたんだけど、出掛けられそうかな?」
「ええ。後、本当に迷惑かけてごめんなさい……」
「全然気にしないで。ごはん何処に行こっか?」
「私はどこでも。ミリアは何か食べたい物ある?」
いつの間にかエメレアの膝の上にいるミリアを、エメレアは優しく撫でながら食べたい物を伺う。
「えーと、私は〝ハラゴシラエ〟に行きたいかな?」
──ん? 腹拵えに行きたい?
まあ、それを何処にするかの話をしてたんだが……
何か少し話が噛み合ってなかったか?
てか、ミリアも〝腹拵え〟何て言葉を使うんだな。
「あ、ユキマサ君〝ハラゴシラエ〟って昨日行った〝料理屋〟の名前だよ?」
「あぁ……〝ハラゴシラエ〟って言うのかあの店?」
異世界感はあまり無い名前だな?
まあ、珍しい名前だが、料理屋感はあるか。
「そういえば──昨日の夜、あの店に何か凄い人だかりが出来てたわよ?」
「あ、それ、多分ユキマサ君のせいかも……」
(まあ、間違っては無いな)
たまたま取れた高級食材の〝大猪の肉〟を『俺とクレハの分を料理してくれたら残りはやるよ』って言って、あの店にラーメン屋の寸胴みたいな鍋いっぱいの〝大猪の肉〟を置いてきたんだったな──
そしたら帰る頃には『大猪の肉が食える店はここか!』みたいな感じで、客が押し寄せてた気がする。
ちなみに〝大猪の肉〟は、まだかなり残っていて〝アイテムストレージ〟にある──それと、さっき少し確認したんだが〝アイテムストレージ〟に入っている食材は、どうやら腐らないみたいだ。
「何したのよ……」
「別に悪いことはして無いぞ? 多分な?」
料理屋に食材を持ち込むというのは、悪い事なのかは、かなり際どい所だが……
店の人も喜んでたんだし、多分問題ないだろう。
「多分て……まあいいわ。混まない内に行きましょ」
エメレアはベットから起き上がると、出掛ける支度をする。
「うん。ユキマサ君も早く行こ──」
すると、俺はクレハに左手の袖を引っ張られる。
「ああ。それに、昨日エメレアやミリアにも〝大猪の肉〟を食べさせたいとか言ってただろ? まだ肉はいっぱい残ってるから──また焼いて貰えるか聞いてみようぜ? 経緯は少し違うし、システィアが不在なのは悪いが、これで少しは約束を果たせそうだな?」
「あ──覚えててくれたんだね……!」
少し驚いた様子のクレハ。
「昨日今日で忘れる程、俺は忘れっぽくは無いぞ?」
「──クレハ、ユキマサさん! い、行きますよ!」
そんな話をしていると、エメレアと既に部屋の外に出ていたミリアに『行きますよ』と声を掛けられる。
「う、うん!」
「ああ、すぐ行く」
今日こそは混まない内にと思い、俺達は少し急ぎ足で、料理屋〝ハラゴシラエ〟を目指すのだった──。
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