第303話 エメラルドの約束2
ある日、私は兄さんと山に山菜を採りに行った。
緑が深い大きな山だ。山は好きだ。空気も美味しいし、水は綺麗だし、何と言ったって食べ物が取れる。
「リョク兄さん、見てキノコ!」
「本当だ。イヤーキノコだね! 凄いよエメレア」
絵に書いたようなシンプルなキノコだ。一年中、冬でも取れるキノコ、私たちの胃袋の強い味方だ。
味もシンプルなキノコだが、太陽に当ててからスープに入れると味が凄くよくなる。
〝太陽は偉大也〟そんな言葉を兄さんが、その昔おじいちゃんに聞いた言葉らしい。いい言葉だと思う。
しー。
リョク兄さんが私に静かにのジェスチャーをする。
鳥だ。木に鳥がいる。
あの顔の赤い鳥は確かキジだ!
「──ごめんね、命をもらうよ」
一本の矢が放たれる。
ゆっくりだが、正確に、真っ直ぐに飛んでいく。
リョク兄さんはエルフの中でも弓の名手だ。
兄さんが狙った的を外したことは見たこと無い。
でも、リョク兄さんは魔力が少ない。
誰にでも得手不得手はあるのだ。
そして今日も難なく矢は獲物に刺さる。
「やった! 今日はご馳走だね!」
タッタカタ。と、走り、私はキジを回収する。
「エメレア、あまり走ると危ないよ、ちゃんと前も上も足元も見て、後方も確認するんだよ」
「うん、任せて! リョク兄さん!」
兄さんに言われた通り、辺りに注意しながら、キジを回収すると、近くに食べられる野草を見つけた。
「わ、やった! これも、これも食べられる!」
ヨモギ、せり、アサツキ、他にも色々。
夢中で野草を採る、と、その時だ──
「──危ない! エメレア!」
バンッ! と、兄さんが私を突き飛ばす。
「きゃ」
蛇だ。木ノ上から私よりも大きな蛇が私を目掛けて飛んできたのだ。
兄さんが突き飛ばしてくれなければ、今頃は蛇のお腹の中、命はなかったかもしれない。
兄さんが蛇に向け、ビンに入った何かを投げる。
それが命中した蛇は一目散に逃げていく。
今のは、この国に自生する蛇の苦手な植物を液状にした物だ。兄さんのお手製である。
「危険な動物だったね。エメレア怪我は無いかい?」
「うん、兄さんは?」
「私も無事だよ。今日はもう帰ろうか、たくさん食料も取れたしね」
「うん……心配かけてごめんなさい」
「エメレアが無事ならそれでいいよ。でも、もし怪我でもしてたらお説教じゃ済まなかったけどね? エメレアはまだまだ特訓が必要なようだね」
私の頭に手を乗せながら兄さんは言う。
「あぅ……」
返す言葉が見つからない。
ぐぅの音も出ない兄さんの正論に私は肩を落とす。
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