第300話 捜索
──夕刻。
街の様子は賑やかだ。俺の手配書もあちらこちらに貼られている。ロキの配慮かギルドには無かったが。
そんな中、俺は〝フード付きマント〟を被りながら〝料理屋ハラゴシラエ〟に来ていた。
「いらっしゃいま──」
「よう、アトラ? ちょいと聞きたいことがあるんだが、いいかい?」
「せ? !! ユキマッ」
俺はアトラの口を手で塞ぐ。
むー! むー! モゴモゴ!
「落ち着いたか?」
こくこく。
意外と本当に落ち着いた様子で頷くアトラ。
「ぷふぁ、し、心配してたんですよ! ちょっとこっち来てください!」
「あ、おい、あまり騒ぎは──」
ズカズカと手を引っ張られ、奥の厨房へと連れていかれる。あれ、これってある意味、確保じゃね?
「おじさん、おばさん! 私、この人を匿います!」
「「!?」」
相変わらずフリーダムのアトラの発言に、この店の店主と女将さんが揃って固まる。
「おぉ、ユキマサ君じゃないかい? いらっしゃい」
「て、お兄さん!? あの手配書は何の間違いだい? 街は大騒ぎだよ?」
いつも通りの店主と話の核心を突いてくる女将さん。呑気だな店主、目の前にいるのは犯罪者だぜ?
「……お、お邪魔してる……」
「まあ、無事でよかったわ」
ふぅっと、息を吐く女将さんは思ったよりも好意的だ。速攻、憲兵に付き出されても文句は言えない立場なんだがな。
「ユキマサさん、ウェイトレスやりませんか?」
(やりませんよ? 何言ってんだアトラは?)
ゴス。
女将さんの拳骨がアトラに落ちる。
その後、どこからか飛んできた水仙鳩のハトラがアトラの頭に止まる。コイツも元気そうだな。
「人手、足りてないのか?」
この店の人手不足は指名手配中の、しかも男の俺をウェイトレスに誘ってくるほどなのか……
つーか、男の場合の呼び方はウェイターだと思う。
「ええ〝魔王戦争〟を境に二人も辞めちゃってね。お兄さんの知り合いに誰かいないかい? お兄さんの紹介なら、住み込みもオーケーだよ──って、そんなことよりも、今日はどうしたんだい? 食事なら直ぐに用意するけど?」
その後ろでは、塊肉を持った両手をクロスし、謎のポーズを決めてメガネを光らせる店主の姿がある。
「いや、食事では無いんだ。悪いが急ぎでな? クレハ、もしくはエメレアかミリアがここに来てないかと思ってな?」
クレハの家、ギルド、その他に街中を探したが見当たらなかったんだよな。どこいったんだ?
「クレハちゃん達かい? 見てないねぇ」
「そうか、すまない、邪魔したな」
ここでも無かったか。
やっべぇ、もう他に心当たりがない。
「あ、待ってください。あの場所じゃないですか? 私、クレハさんが行きそうな場所、知ってますよ」
「あの場所?」
アトラに呼び止められ、俺は足を止める。
が、次の瞬間、聞こえてきたのは赤髪のエルフのウェイトレスの声だった──
「……あの、たった今エメレアさん来ましたよ?」
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