第293話 ノアの部屋4
*
「重々、申し訳ありません」
そう謝るのは、テーブルを挟み、ゴシックソファーに座る俺とノアの前に床に正座するロキだ。
別に俺とノアが正座させてるワケじゃ無いぞ? 自発的にロキが「私はここで大丈夫です」と、そこに座ってるだけだ。
「久しぶり、って、程でも無いか。フォルタニアは無事に家に帰ったか?」
「はい、本当の本当にお陰さまで」
ガバッと、両手を地面に付け、額を床に当てながら頭を下げるロキは一向に頭を上げる気配は無い。
「それにしてもよく分かったね。ここがバレるなんて本当に予想外だったよ。一本取られたね。流石はギルドマスターだ。ちなみにだけど、参考までにここまで至った経緯を聞いてもいいかな?」
「消去法ですかね。私もまさかの場所でした。クレハさんの家、街外れの宿屋、裏をかいてギルドの椅子などを探し回りました。フォルタニアさんから大聖女様に会い、門前の更に前に助けられたというヒントが無ければ到底たどり着けません。ここは安全です」
相変わらず、頭を下げたままのロキが言う。
「なるほど。それなら納得だ♪」
そんな経緯があったかとばかりに、優しくポンと手を叩くノアは、うんうんと頷いている。
「ユキマサさん、本当に申し訳ありません。全て私の責任です、私は貴方を利用した。謝って済むような問題ではありませんが、どうか謝罪を──」
「いいよ、別に。よかったな、助かって。つーか、お前に言われなくてもフォルタニアの話を聞いてたら、自発的に〝シルフディート〟に向かってた。むしろお前に言われなきゃ、結婚式に間に合わなかったかもしれない。その点はお前に感謝だ、ありがとな」
政略結婚だなんて、今時流行らないその手の話しは嫌いなんだ。異世界では普通なのかどうなのは知らないが、こちとら生粋の現代日本国育ちでね。
少なくとも稗月さん家では、もれなく政略結婚は犠牲って言うんだ。クソ食らえ、この野郎。
親父なんて『恋愛こそが自由の象徴であるべきだ』何て言って、俺と同じ和風大好き人間なのに政略結婚満載の時代劇とかあんまり観なかったからな。城とか和服とかは好きでよく観光はしてたが。
理沙と一緒に恋愛ドラマ見て大号泣してた時は流石の母さんも「あ、あなたー……」と苦笑いしてた。
「まさか、お礼を言われるとは思わなかっったんじゃない? ユキマサ君はこういう人だよ、ロキさん?」
「……私はそんな彼の人の良さに付け込みました。家族を守るためとは言え、自分を犠牲にせず友人を罠にハメた。私は人として決してシてはいけないことをした、もし穴があったら入り、隠れ住みたい気分です」
ロキは頭を上げない。姿勢も崩さない。
それに本当に悔いているのだろう。うわべだけでは無い、芯からの謝罪の言葉に俺は聞こえる。
もし仮にこれが演技だとしたなら、数多の場面で助演男優賞を総取りできることだろう。
まあ、異世界にそんな賞があるかは知らないけど。
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!




