第292話 ノアの部屋3
「うんうん、ユキマサ君にも小さい頃があったんだね♪ 神様に、魔法に憧れる、小さな頃のユキマサ君を想像したら何か楽しくなってきちゃった♪」
「あのなぁ、誰にだって幼少期はあるだろ?」
俺の左胴体に抱きついた状態のノアが更に笑う。
「ふふ、ユキマサ君、問題児そう♪」
「まあ、親父達には手のかかる子だと、よく言われたよ。そんな中でも婆ちゃんだけは『元気が一番です』とか何とか言って毎回笑ってくれてたな?」
(……そうか……婆ちゃん……もういねぇんだな……)
俺が朝起きると決まって、湯飲みで温かい緑茶を飲んでいて、仕事は和菓子屋のレジに座っている。
雨の日も晴れの日も、いつの日でも俺と理沙に誰よりも優しく笑いかけてくれた、あの顔が今でも頭から離れない。
8年会ってなかったとは言え、いざ亡くなったと聞かされると、改めて凹むな。本当に超が付くほど優しかったからな、婆ちゃんは。
理沙も『これでもか!』てぐらいには懐いてた。婆ちゃんの膝の上は小さい頃の理沙の定位置だったな。
「お婆ちゃんか、私は会ったこと無いな」
「そういや、ノアの家族構成はどうなってるんだ? あ、いや、話したくなかったら、別にいいんだが」
「ううん、大丈夫だよ。健在なのはおじいちゃんだけかな? お婆ちゃんは私が生まれる前に。両親は私が小さい頃に亡くなってるよ──って、うん? あれ、ちょっと待って、誰か来たみたい。こんな時間にってことは緊急かな?」
むくりと、ノアが上体を起こす。
「は? マジか!?」
疚しいことは無い。決して何も疚しいことは無いのだが、この体勢というか、状況が状況なので、少し慌ててしまう。
「ま、いっか。上がって貰おう」
「ちょ、待て! 俺、今逃亡者、10億の首!」
そんな俺の叫びも虚しく、ノアは平然と扉を開ける。そこに姿を現したのは意外や意外の人物──
「お休みの所、失礼します。先日はどうもありがとうございました。大聖女様」
〝大都市エルクステン〟のギルドのギルドマスター、ロキ・ラピスラズリであった。
「やあ、ロキさん。正直驚いたかな? どうやって入ってきたの? それと私に何か用事かな?」
「いやはや、私は〝半霊人〟でしてね。こう言った潜入は得意分野なのですよ──ユキマサさんがこちらに居ると踏んだのですが、会わせていただけますか?」
「──俺ならここだ。よく分かったな、ロキ?」
ぐいっと、ノアの背後から現れた俺を見ると、目を見開き、生き別れの兄弟にでも逢ったかのように、ぱぁぁ! とした表情になったロキが涙声で口を開く。
「ユキマサさん! あぁ、この度は本当に申し訳ないことを……フォルタニアさんも救っていただいて……私は貴方に何とお詫びとお礼を申し上げればいいことか……すいません。ごめんなさい。申し訳ありません」
部屋の入り口で膝をつき、頭を下げるロキに、ノアは冷静に「取り敢えず、中にどうぞ。隠密にしては騒ぎ過ぎだね」と言って部屋の中に案内するのだった。
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