第262話 選択
「よく聞きなさい。ウルスラを倒してくれたお礼として、この件で私があなたにできるのは、一つだけ」
「お母様!!」
フォルタニアが火澄の魔法で作られた、樹木の根を登ってくる。
「フォルタニア。これはあなたの事でもあるのだから、あなたも聞いておきなさい。全てはその男の言葉次第よ」
「随分気前がいいな? で、何をしてくれるんだ?」
「一つはフォルタニアの件の白紙、勿論政略結婚も金輪際考えないわ。晴れて自由の身ということよ」
ん? かなり破格だぞ? どうした?
「二つは貴方が起こした、この事件の一件の見逃し。私がなんとか揉み消してあげるわ。少し時間はかかるだろうけど──さて、私が叶えられるのはどちらか一つよ? 今ここで選びなさい」
「気前がいいな? 勿論、フォルタニアの自由だ」
「ユキマサ様! いけません!! ダメです!」
「元々、俺はそれが狙いで結婚式を壊しに来てるんだからな? ……つーか、ここでそれを選ばなきゃ全てが水の泡だ。じゃないと、また直ぐに日を改めて政略結婚させられるぞ?」
「な、なぜ……なぜ、私の為にそこまで……」
「困ってる友達を助けるのに理由が必要か?」
ただでさえ、友達は少ない方なんだ。一層大切にしなきゃバチが当たるってもんだ。
「そんな事をいってる場合ではありません! このままではユキマサ様が大罪人に吊し上げられてしまうのですよ! そうなったらどうするつもりですか!」
フォルタニアの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。どうやら本当に心底心配してくれてるらしい。
「もうそうも言ってられないだろ? もしこれで俺が罪の揉み消しを選んだら、ただエルフの国が壊れただけになるぞ? 壊れた国の為にもお前は救われろ」
「それには私も同意ね。というか、あの〝世界樹〟どうしてくれるのかしら? 穴! 穴空いてるわよ!」
ジトリと火澄に睨まれる。
だが、俺は即座に空を見上げて視線を逸らす。
「じゃあ、頼んだぜ? 女王」
「ええ、分かったわ。逃げるなら早く逃げなさい」
「ハハハ、違いねぇ、フォルタニアは連れてくぜ?」
そう言い、俺は未だにウェディングドレス姿のフォルタニアを抱え上げる。つーか、未だにって当たり前か。着替える余裕なんて無かっただろうし。
「ゆ、ユキマサ様!!」
「帰るぞ、フォルタニア、ロキが待ってる」
少しだけフォルタニアの動きが止まった。俺はそんなフォルタニアを微笑ましく思う。
そうして兔にも角にも、俺はフォルタニアを連れてこの場を去るのだった──
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