第24話 八柱の大結界
「今から、約1000年前に4人の魔王は〝天聖〟によって封印されました。これが〝天聖〟が人類の英雄と呼ばれる理由の1つです。そして、その封印が解かれたのが──今から60年程前になります」
(60年前……意外と最近……いや、最近でも無いのか? 何か、約1000年前とかの話の後に、60年前とか聞くと、急に近く感じるな?)
「続けますね。60年前に魔王の封印が解かれ復活すると4人の魔王の内の1人〝魔王ガリアペスト〟率いる魔王軍が人類を襲撃──これにより人類の多くが亡くなりました。これが魔王復活後、最初の〝魔王戦争〟です。特に被害が大きかったのは、今では亜人と呼ばれている方々です。昔は〝鳥人族〟や〝猫人族〟それに〝吸血鬼〟等、個々に里や村がありましたが──60年前の〝魔王戦争〟により、集落の壊滅や種族の激減に至った為、何とか生き残った者達が、種族は関係なく共に手を取り助け合うようになり、今に至ります」
俺は質問は後回しで黙って話を聞く。
「そして今では〝人間〟と〝エルフ〟を除く方々は総じて〝亜人〟と呼ばれています。現在は大きく分けてこの〝人間〟〝エルフ〟〝亜人〟の3種族が〝人類〟と呼ばれる者達になります──60年前の〝魔王戦争〟以前は決して仲は悪いわけではありませんが……積極的には手を取り合う事のなかった種族が、手を取り〝人類〟として共に魔王軍と戦い、生きる為に歩み寄ったのは60年前からですね。この歩み寄りは唯一、魔王が現れたお陰で起きた利点とも言えるでしょう」
「──そうだな。もしそれが無かったら、少なくともフォルタニアやエメレアは、今ここに居なかった可能性が高そうだしな?」
「そう言って貰えると私も嬉しいです」
優しく微笑むフォルタニア。
それと対極にぷいとエメレアはそっぽを向く。
「魔王は嫌いだけど……私もそれに関しては同じ意見です。こうして、フォルタニアさんやエメレアちゃんに出会えましたから」
昨日聞いた話だと。7年前にもあった〝魔王戦争〟で両親を亡くしているクレハの表情は険しい。
だが、それでもエメレア達に巡り会えた事は、本当に嬉しいとクレハは一切の迷いは無く頷く。
「く、クレハ……ありがとう! 私も大好きよ!」
エメレアは明るい表情になり幸せそうな様子だ。
ちなみにエメレアは嬉しそうに『私も大好きよ!』と言っているが、今の話でクレハは大好きとは一言も言って無い……まあ、これは言わぬが花だな。
「では、次です。ユキマサ様──〝八柱の大結界〟についてはご存じですか?」
──〝八柱の大結界〟?
勿論、ご存じ無い俺は……
「悪い、知らない」と、答える。
その返答に
「嘘でしょ……」
と、ドン引き気味のエメレア。隣のミリアもこれには目をパチクリさせてる。ちなみに、俺が異世界から来た事を知るクレハだけは黙ってお茶を飲んでいる。
「これが〝天聖〟が人類の英雄と呼ばれるようになった2つ目の理由です──」
ここは空気は読んでくれたのか、フォルタニアは俺の無知には何も言わず話を続けてくれる。
フォルタニアが話を始めると、エメレアも不機嫌そうに俺を見ながらも口を閉じる。
「〝八柱の大結界〟は凄く特殊な結界なのですが……その名の通り8つの魔術柱を基盤に発動された〝大魔術結界〟です」
「〝大魔術結界〟? その〝天聖〟ってのはそんな物まで作ったのか?」
「〝八柱の大結界〟は言うならば〝天聖〟にとって、もし魔王が復活した際の保険のような物にだったと思われます。この結界は、直接的に人類を守る結界では無く──〝魔王の行動を制限〟する結界です」
(守るではなく、制限する結界?)
「〝天聖〟は魔王の封印が、もし解けた時の為に、この〝八柱の大結界〟を完成させていたと言われています。これがある限りは〝3人の魔王〟は1人ずつしか行動する事ができません」
「何だそりゃ? ずいぶん規格外な結界だな?」
もしそれが本当なら、3人の魔王が同時に、攻めて来る事は無いと言う事になる。
──60年前の〝魔王戦争〟では〝魔王ガリアペスト〟率いる1つの魔王軍に、壊滅的な被害を受けた。
そして60年前の時点では、魔王は4人いた筈だ。
(もしその時に4人の魔王が全員同時に攻めてきてたら……その時点で、結構ガチで人類は滅びてたんじゃねぇか?)
魔王同士は、仲が良いのか、対立しているのかは知らないが……少なくとも人類の味方ということは無いだろうからな。
「確実に人知は超えてますね。ちなみに〝八柱の大結界〟により動ける魔王は〝66日〟ごとに変わります──それと、これは確実な確認は取れてませんが、動けない時の他の魔王は一時的に再度〝封印状態〟となっているのではと言われています」
中々珍しい仕掛けだな。
66日ごとに変わる魔王何て聞いたこと無い。
日本の感覚と一緒だとすると約2ヶ月ちょいか?
「そりゃ人類の英雄と呼ばれるわけだ。その〝天聖〟がいなかったら、とっくに人類は滅びていてもおかしくないだろ? つーか、滅びていたんじゃないか?」
「私もそう思います。その為、現在の魔王軍は〝八柱の大結界〟の基盤である──8つの魔術柱を破壊する事を重視しています。これが8つ全て破壊されれば、人類は総崩れ……いえ……まず、滅びる事でしょう」
そのまんまの意味で生命線ってことか……
「興味本意だが、その魔術柱ってのはどこにあるのか聞いてもいいのか?」
その魔術柱の場所が秘匿なら。まず教えてはくれないだろうが……国家機密とか言うレベルじゃないしな?
「そちらもご存じ無いみたいですね。現在は、残念ながら残りの〝八柱の大結界〟の魔力柱は4本のみとなってます。現在の残りの4本の魔術柱は──
人類の中心〝中央連合王国アルカディア〟
エルフの国〝シルフディート王国〟
そしてこの〝大都市エルクステン〟
この3ヶ所の魔力柱は、魔王軍にも場所を知られてしまっています──」
フォルタニアは少し間を空けてから口を開く。
「……そして後1ヶ所は〝アーデルハイト王国〟です。こちらの魔術柱だけは、魔王軍に場所が知られる前に──先々代のアーデルハイト国王が特殊な魔法をかけており、この〝魔術柱〟の場所だけは、まだ魔王側にも知られていません」
──と、フォルタニアは、俺に何も隠すこと無く懇切丁寧に〝魔術柱〟の場所を説明をしてくれた。
……てか、魔術柱……もう半分しかねぇのか?
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!