第247話 剣斎vs屍4
「──え、エルルカ様ッ!!」
目を見開き、信じられないとばかりに驚いたフォルタニアがエルルカに慌てて駆け寄る。
直ぐに〝上回復薬〟をと、いつもの癖で、自身の懐に手を伸ばすが、今はウェディングドレス姿だ。そんな物を持ってるわけがなかった。
急ぎ、フォルタニアは回復魔法を試みるが、ズシリと、約1m先の地面に人の気配を感じる。
フォルタニアがそちらに視線を向けると、双剣を持った長い髪の男がこちらをギロリと見下ろしている。
修羅──
そんな言葉がよく似合った。ゾッとするような鋭い目、身体を纏う尋常じゃない量の魔力、人を殺すことを何も躊躇わないであろう雰囲気。
もしこの男がたった数cm双剣を動かせば自分は死ぬ事になるだろうと、フォルタニアは肌で強く感じた。
「死死死死……さあ、心臓をいただきますよ」
か、身体が動かない。自分より遥かに強い者を目の前にして身体がすくんでしまっているのだ。
双剣が振り上げられる──
「いけません!!」
フォルタニアはエルルカを全身で庇う。
双剣が振るわれる。
だが、フォルタニアに刃が当たることはなかった。
ドバドバドバっと、血が流れる。
「──いい痛みだ。やるな、貴様!」
「お、お兄様……」
フォルタニアを庇ったのは、フォルタニアの実の兄──ヴォロン・シルフディートであった。
「例え、母や妹でも、甘美なる、痛みや苦痛を渡すわけにはいかん!」
数秒、あのシリュウが唖然としてヴォロンを見ている。刃物で刺されて喜ぶような奴は、今まで生きてきた人生の中で一人もいなかった。
「フォルタニア様、こちらを!!」
ポイッと投げられたのは〝上回復薬〟だ。現れたのは紫色の髪の青年──オックボック・テイアだ。隙を見てこちらを助けに来てくれたらしい。
「1分です、それ以上は持ちません!」
要点だけを伝えると、オックボックはシリュウに向かう! 自分の持てる全力で!!
「死死死死、今の私を相手に1分ですか。随分長く見積もられたものですね」
シリュウが双剣を構える──
今のシリュウは全快だ。先ほど〝魔力回復薬〟を飲むまでは、シリュウは〝魔力枯渇〟状態にあった。
全快のシリュウは〝剣斎〟という、自身の身を脅かす可能性のある存在を前に全力を振るった。
だが、目の前の紫髪の青年にはシリュウは全力を振るうまでの驚異はないと感じていた。
「はぁぁぁ!!」
ありっ丈の魔力を剣に込めオックボックが何とか攻撃を逸らす。だが、その衝撃で全身に痛みが走る。
(ここまで力の差が!?)
手を止めるわけにはいかない。
休まず、攻撃を続ける。
剣を何度か交わした後、タイミングを計り、オックボックはシリュウに何かを投げる。
つまらないといった表情でシリュウがその何かを斬ると、斬った玉から白い煙が上がる。
煙幕だ、時間稼ぎには持って来いだ。
1秒、2秒、そこで煙がシリュウの振った双剣の風圧で消しとばされる。2秒も持てば上等過ぎる部類だ。
──後は、この命がどこまで持つかだ。
オックボックは剣を構え、覚悟を決める。
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