第241話 誰も居ない場所
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「アルタイル・ベガ・ロゼ、私はここに残るわ」
唐突な言葉だった。話を聞いていた、アルタイル・ベガ・ロゼの三人は息を呑む。
「危険です、世界樹に避難を!」
「あれの封印が解かれたのなら〝シルフディート〟の何処にいようと同じだわ──それに万が一、再度あれを封印できるとしたら王家の血を引く私だけだもの」
「ならば、我々もお供致します! どこまでも!」
アルタイル・ベガ・ロゼは頭を垂れる。
「そう、助かるわ」
「おい、待て! 俺はどうなる、人を寄越せ! 俺は逃げるぞ!」
激怒する身勝手なボルスに女王は冷たい視線を向ける。そして女王は無言でアルタイルに合図すると、その合図を受けアルタイルが動き、ボルスの脛椎を叩き、ボルスを気絶させる。
倒れたボルスを兵士に預けると、アルタイルは改めて女王に頭を垂れ、自身の胸に手を当てる。
それを確認した女王は小さく頷き、すぅっと息を吸うと、大声で指示を出す。
「全兵士に告ぐ! あの男と〝剣斎〟が〝屍〟と〝ウルスラ〟を食い止めてる今が好機! 我が国の近衛兵団は国の誇りに賭けて、残りの〝魔王信仰〟の者共を見事、討ち果たしなさい!」
「「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」」
*
「結婚式を壊しに来たのはいいんだが、大広間一つ潰して作った結婚式場を壊す所か、これじゃ王宮──いや、下手をすれば国が粉々になるぞ?」
目下の黒龍こと、ウルスラはと言うと奴は、空、つまり上空にいた。正確にはいつの間にか空を覆っていた、習字の墨のように真っ黒な黑雲の中だ。
にしても、大きい──∞の文字みたいに、塒を巻いて空に浮いているが、垂直にすれば、東京タワーと同じか、それより少し小さいぐらいのサイズはあるんじゃねぇのか?
こんなデカい生物(?)は初めて見た。魔物なのか魔獣なのか、それとも別の何かなのかは知らないけど。
俺はウルスラから目を放さずに、女王の下へ行く。
「おい、女王。戦う場所がほしい、何処か人の居ない場所は無いか? このまま戦えば、王宮もめちゃくちゃだ、少なくない死傷者も出るだろう」
「結婚式を壊しに来た男がよく言うわね。なら、西に向かいなさい──〝魔王信仰〟が来た方角よ、そっちなら誰も居ないでしょう」
少し含みのある言い方の女王は視線を反らす。
──〝魔王信仰〟が来た方角。つまりはだ、あの〝心臓集め部〟の奴らが通ってきた道には、もうそこに誰も生き残ってる奴はいないと言うことだ。
クソ、相変わらず気に入らねぇ連中だ。
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