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第23話 異世界事情と天聖



 *

 ──その後、ファルタニアに『少し休憩をと思ってるのですが、ご一緒にお茶でもいかがですか?』と、お茶を誘われ、俺とクレハとエメレアとミリアは、フォルタニアにギルドマスター室へと案内されていた。


 クシェラとクシェリ、それと〝モフっ子幼女〟のココットも呼ばれたが、用事があるとの事で不参加だ。


 ココットは凄く行きたそうで残念がっていたが、ファルタニアに『また呼ぶので、次は是非とも来てくださいね』と言われて、最後は明るい表情になり『うんッ!』と元気に返事をして帰っていった。


 そして、人生で二度目となる、ギルドマスター室に案内されると──そこに、いるであろうと思っていた、人物の姿が無いことに気づく。


「ロキは不在なのか? 〝アーデルハイト王国〟の王族が来るとか来ないとか聞いたが──その件か?」

「はい。それもございますが、今は色々ごたごたしておりまして、あちこち回ってるかと思われます」


 まあ、ギルドマスターなら何かと忙しいか。


「ユキマサ様。お茶は何かご希望はございますか?」

「なら、緑茶はあるか?」


 と、この世界に紅茶があるなら、緑茶があってもおかしくは無いだろうと考え、リクエストする。


 紅茶や緑茶は、確か、発酵度合いが違うだけで、元々は同じ茶の樹から作られてる筈だ。


 まあ、この〝異世界〟の茶葉が〝元いた世界〟と同じ製法なのかは、知らないんだけどさ……同じシャンプーでも〝異世界〟だと──原材料は〝妖精の花(ディワフロース)〟とか言う、エルフの国の植物が原材料らしいしな。


(異世界2日目とはいえ、まだまだ本当に知らない事だらけだ。もし、図書館でもあれば情報収集がてら行ってみるか……)


「緑茶ですね。承りました。皆さんはどうしますか?」


 ファルタニアは、クレハとエメレアとミリアにもリクエストを聞く。


「では、私も緑茶でお願いします」

「私も同じ物をお願いします」

「わ……私も、同じもにょッ……のでお願いします……」


 クレハ、エメレア、ミリアも同じく緑茶を頼む。


「──はい、では少しお待ちください」


 せっせと、フォルタニアはお茶の準備をする。


「……で、ユキマサ。いつの間にファルタニアさんとまで仲良くなったのよ? この女(たら)しッ!」


 エメレアが質問……いや、罵倒してくる。


「つーか、誰が(たら)しだ? 誰がッ!」


 ここに来て、ようやく、俺はエメレアの〝女(たら)し〟発言に対し、突っ込む事ができた。


「……ユキマサ君は女(たら)しだよね。それと、さっきのエメレアちゃんがタイプだって件──どういう事なのか……まだ、私、返事聞いてないよ?」


 隣に座るクレハは、目を細めて俺をジト目で見ながら、低めの声で聞いて来る。そして、その表情から察するに、何やらご立腹な様子だ。


「あれは例えだ。まあ、美人なのは認めるが……」


 後はエメレアへの、ささやかな嫌がらせのつもりだったんだが、何故かこれは失敗に終わっている。


「ふーん。例えなら別にいいけど。それに確かに、エメレアちゃんは美人だし……可愛いもんね……」


 ムスッとするクレハは、相変わらずジト目で俺を見てくるのだが、エメレアには優しい表情で、何か羨まし気な感じで見つめている。


 てか、俺クレハにムスられること多くないか?

 これで、クレハにまで嫌われたら流石に凹むぞ?


「……こ……この……(たら)し……ッ……///」


 と、少し顔を赤くしながらプイッと、そっぽを向きながらも、隣に座るミリアの頭を撫でるエメレアだが、何故かいつもの俺への罵倒と、ミリアへの撫でにキレが無い。


(どうした? コイツ……具合でも悪いのか? あ、ギルドマスター室だから緊張してるのか?)


「エメレアどうしたの? 顔赤いよ? もしかして、か、風邪とか!? ぐ、具合悪いの?」


 頭を撫でられているミリアも、いつもと何処か違うエメレアを察して、心配しているようだ。


(それにしても、罵倒にキレの無いエメレアか……何か逆に調子狂うな……?)


 黙ってれば、本当に美少女だしな?


 綺麗なサラサラの長い金髪に、白い肌と整った顔立ち──更におまけに、女の子らしい身体の凹凸も、ハッキリとしていて、スタイルも良いからな。


 ……って、これじゃ、今後エメレアに〝黒い変態〟とか言われても、反論できなくなるな。


 じー………………


(何か、隣からクレハの視線を感じる気がする)


 じー………………


「今度は何だ……?」

「別に……エメレアちゃん可愛いもんねー」


 クレハは『つーん』とし、ずっと不機嫌だ。


 するとエメレアがバーンッと立ち上がり──

「クレハのが100倍可愛いわよ! 私、命を賭けるわ!」

 と、自信たっぷりの表情で、エメレアは何故かこのタイミングで、自らの命を賭け始める。


「あ、ありがとう。でも、エメレアちゃんもミリアも凄く可愛いし、それに私は二人とも大好きだよ──」


 そう言いながら微笑むクレハは、心からの本心なのだろう。

 クレハの婆さんと一緒に居た時みたいな、とても優しい表情だ。


 それを聞いたエメレアはパタリと座り込み──

『こ、こんなのニヤけちゃう……/// 反則よ……』

 と、呟き、片手で口を必死に押さえて震えている。


 少し顔を赤くして、モジモジしたミリアも嬉しそうに「うん、わ、私もだよ!」と言っている。


 エメレアだけ、何か違う気がするが……

 まあ、幸せそうだし、放っておこう。


 すると──


「お待たせしました」


 フォルタニアが、温かいお茶と饅頭を運んでくる。


「悪いな。いただきます──」


 俺は、礼を言い、お茶と饅頭を受け取る。


 運ばれてきたお茶は凄く良い香りがする。


 クレハやエメレアやミリアも『ありがとうございます』と言いながら、お茶を受け取っている


「どうぞ、粗茶ですが。これはエルフの国で取れた茶葉で、私のお気に入りなんです──」

「へぇ。そうなのか? そりゃ楽しみだ」


(じゃあ〝エルフの国のお茶〟ってことか?)


 冷める前にと……早速、俺はお茶をいただく。


 ──!!


 ──もう一口!!


(何だこれ……! めっちゃ美味いな!)


 味が深いし、香りや喉ごしが凄く良い──


 お茶を口に含むと、口いっぱいに、身体にも良さそうな優しく深いお茶の味が広がり──そしてそれを飲み込むと、1秒……2秒……3秒と、口に残ったお茶の美味さが、更に強みを増して、広がっていく。


 〝元いた世界〟でも、結構高めの高級茶を飲んだことがあるが……

 それでも、これ程のお茶は飲んだこと無いぞ?


(──お、恐るべし、エルフ茶葉……)


「いかがですか?」


 と、フォルタニアが聞いてくるので、


「驚いた。今まで飲んだお茶の中で、一番美味い」 


 俺は惜しみ無い称賛を送る。


「本当ですか? それは良かったです。実はこのお茶だけは、ちょっと自信があったんですよ!」


 嬉しそうなファルタニアは、仕事の作り笑いとかでは無く──今、初めて本心で笑ってくれた気がする。


「あ、美味しい!」


 クレハも美味しそうにお茶を飲んでいる。


「嘘、これエルフの国でも最高級の茶葉ですよね? あの──エルフ王室も御用達(ごようたし)の……」


 何やらエメレアはこの茶葉を知っている様子だ。


(つーか、粗茶じゃねぇじゃねぇか……)


「そ、そうなの!?」

 と、驚くクレハ。その向かいに座るミリアも、お茶を飲んでいたが値段を聞くと「こ、高級……なんだね……」と呟き、それからは恐る恐る飲んでいる。


「いえいえ、これは私の個人的な貰い物ですのでお気になさらないでください。おかわりもありますよ」

「太っ腹だな? で、太っ腹ついでに、いくつか少し聞きたいことがあるんだがいいか?」


 クレハに聞こうかと思ってたが、副ギルドマスターのフォルタニアもいるなら、情報の幅も広がるし、ちょうどいい。


 もう、この際この世界から見て、俺が〝異世界〟から来たって話す事になっても、この面子なら多分問題ないだろう。


 ──と、それぐらいの覚悟で質問をする。


「はい、何でしょうか?」

「魔王について詳しく聞きたいんだがいいか?」


「──ちょ、ちょっと、ユ、ユキマサ君ッ!?」


 少し慌てた様子のクレハは俺に耳打ちしてくる。


『いいの? フォルタニアさんもいるのに?』

『少し悩んだが、アルテナの事とかを意図的に言うつもりは無いしな。それに最悪この面子ならバレても問題無いだろ?』


『ユキマサ君がいいなら、いいけど……』


 と、クレハは納得してくれる。


「大丈夫ですか? よければ、席を外しますが?」

「いや、大丈夫だ。悪いな」


 気を使って、少席を外そうとするフォルタニアを、俺は軽く制止する。


「分かりました。それで〝魔王〟でしたか? その〝魔王〟の、何が聞きたいのでしょうか?」


「基本的な事から全部だ。それに、何で魔王は3人いる? 確かフォルタニアは、嘘が分かるんだよな? だから先に言っておくが、俺はかなり遠くから来ていてな──正直な話〝魔王〟とか〝魔族〟とか、それこそ〝魔物〟の一般的知識ですら、よく知らないんだ」


 俺は、(あらかじ)め、フォルタニアにそう伝えておく。


 〝異世界〟だって、遠くって言えば遠くだろうし、嘘は吐いて無い筈だ。


「わ、分かりました……」


 俺の無知さに、心底ビックリしているのだろうか。

 フォルタニアは軽く目を見開いて驚いている。


 うーん、そう考えると何か複雑だな?


「ゆ……ユキマサ……貴方……本当に……本物の馬鹿だったのね……ごめんなさい……色々言いすぎたわ……」


 エメレアに至っては、口に手を当てながら、物凄く可哀想な人を見る目で俺を見てくる。


(こいつ……(あお)るの上手いじゃねぇか……)


「いくら遠くから来ていても、魔王や魔族の話ぐらい、この世界にいれば嫌でも耳にする筈よ? それでも知らないなんて……可哀想に……本当に物覚えが……いえ……記憶力が悪……いえ、頭が悪いのかしらね」


 『ぐすん……』と──それはそれは、わざとらしく、手で涙を拭う動作をし、エメレアは()()()をする。


「悪意100%の解釈をどうも……てか、エメレア? お前……もはや清々しいな……?」


 こんな〝心の(こも)った悪意〟は初めてだ。


「エメレアちゃん……」


 クレハは自分の額に手を当てながら『はぁ……』と軽くため息をついている。


「エメレア、ユキマサさん馬鹿じゃないよ?」


 クイクイと、エメレアの服の袖を引っ張りながら『違うよ?』と純粋な目で話すミリア。


 ……ホントいい子だな? 

 今度、何か奢ってあげよう。


「え、えっと……これはね……」


 予想外の所(ミリア)から、凄く純粋な目で『違うよ?』と真剣に否定され、言葉に詰まるエメレア。


(いいぞ、ミリア頑張れ……!)


 すると、その様子を黙って聞いていたフォルタニアが、軽く咳払いをしながら口を開く──


「んッ、んッ、失礼。話を戻しますよ? ユキマサ様の話は分かりました。少しだけ、何かを濁してる部分があるようですが……嘘はありません。濁した部分にも何か理由があるのでしょう。私の知る範囲でよろしければお話いたします」


(凄いな、今のでも濁したってのが分かるのか……)

 

「助かる」


(やっと聞けるか、3人いるという〝魔王〟の話を)


 てか、女神様(アルテナ)……もう少し教えといて欲しかったぞ。


「では、まず──魔王は正確には4人おりましたが、〝7年前の魔王戦争〟で1人減り、現在は残り3人です」

「らしいな? そこまでは、クレハに聞いた」


 確か、その魔王戦争で〝魔王ユガリガ〟とかいうのが倒されたらしい。

 

「では、ここからですね。

 現存する残りの魔王は3名──

 1人目は〝魔王ラフィメストス〟

 2人目は〝魔王イヴリス〟

 3人目は〝魔王ガリアペスト〟

 この魔王達により、今人類は絶滅の危機に立たされております──」


「ん? 魔王が現れたのは、結構最近なのか?」


 ()()()()の、()に何か含みがあるように感じた俺は、そこを聞き返す。


「ユキマサ様〝天聖(てんせい)〟と言う人物はご存じですか?」

「いや、聞いたことは無いな? 二つ名か?」


 〝天聖〟で本名ってのは無さそうだからな。


「……はい、そうなりますね。本名は知られていません〝人類の英雄〟とも呼ばれていますが、何せ、1()0()0()0()()()()も前の人物ですので──」


 『では、そこから話さねばなりませんね』

 そう言うと、フォルタニアは話を続ける──




 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話は面白い。 [気になる点] 毎回コピペしたような星つけてっていう後書きがウザい。 そんなの書く余裕があるなら一話をもう少し長くして欲しい。話が面白いのに、あまりのウザさに最初星5つけたけ…
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